「怒り上手」な人は「リクエスト」を持っている! アンガーマネジメントのプロが教える「下手な怒り方」

怒るほどに怒ることの目的から遠ざかる

怒ることの目的は「相手にリクエストを伝えること」にあります。相手を反省させることにも、へこますことにも、ましてや恨みを晴らすことになど全くありません。怒り上手な人はリクエスト上手な人で、怒り下手な人はリクエスト下手な人です。

怒る人がしなければいけないことは、相手に今どうして欲しい、これからどうして欲しいかを、相手が理解できるように、相手がリクエストを聞いてもいいなと思えるように伝えることです。

リクエストは命令ではありませんので無理強いすることはできません。リクエストが通る可能性が高くなるのは、相手が理解をし、この人のリクエストなら聞いてあげたいと思ってもらうことにあります。

ところが、多くの人は怒ることは相手に力づくで言うことを聞かせることと勘違いをしています。だから、相手の気が悪くなるような言い方をお構いなしにするのです。相手に不愉快な感情をもたせれば、それだけ自分のリクエストが通らなくなるとも知らずに。

ほとんどの人は怒ることが目的になってしまい、リクエストをはっきりさせないまま怒ることをしてしまいます。例えば、怒っている人に対して「どうすれば良いですか?」と聞いた時、「どうしたもこうしたもない!」と言い返してくるようであれば、それはリクエストがないか、あるいは自分でもどうして欲しいのかわからないまま怒っている人です。あるいは「それを考えるのはお前だろうが!」と乱暴なことを言ってくる人もいますが、その人も実は相手に何をして欲しいのか自分でもよくわかっていません。単純に気分が悪いので、それを相手にぶつけているだけです。

これではいくらこちらが話を聞こうとしても、問題を解決しようとしても前に進むことはできません。また、リクエストがあるにしても、そのリクエストがとても聞けるようなものではないこともよくあります。度を超したクレームのようなものはその代表格です。例えば、サービスに満足しなかったから割引しろ、その値段じゃ高すぎるからいくらにしろ、自分のために何か融通しろ、気に入らないから消費者センターに電話するぞ、等々、不当と言えることを言う人がいます。こうしたものはリクエストではありません。ただのわがままであって、不当な要求です。不当ですから、受ける必要のないものです。

世の中に怒っている人はたくさんいますが、上手に怒れる人はほとんどいません。リクエストもなく感情をただぶつけるか、不当な要求をすることが正しいことと思い違いをしています。

リクエストの本質を忘れて怒っても、その怒りは無駄になるだけです。

 

安藤俊介
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会ファウンダー。新潟産業大学客員教授。アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『私は正しい その正義感が怒りにつながる』(産業編集センター)等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。

※本記事は安藤俊介著の書籍『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。

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