「駅前の古びた店」はなぜつぶれない? 客が来なくても問題無い、お店の裏側に隠されたからくり

お店を続けているのは相続税対策?

もう一つ、儲からなくてもお店を続ける理由があります。それは相続税対策です。一定の要件を満たす「店舗併用住宅」の敷地については「小規模宅地等の特例」という制度が活用でき、土地の相続において最大80%の節税が可能です。平成27年からは、遺産の基礎控除額が引き下げられ、実質的に相続税の増税が行われました。そのため富裕層はいかに相続税を減らすかに四苦八苦しています。資産形成に成功した店主の場合、資産総額はそれなりに増えており、何といっても一等地にあるお店の土地の評価額が数十年の間に高騰しているため、多額の相続税を支払う必要があります。

国税庁の資料を見ると、課税価格の合計が2億円、配偶者と子供が2人の場合、3人合計で2700万円の相続税が発生します。しかしその遺産が「店舗併用住宅」であれば、評価額が2億円×0.2=4000万円となり、基礎控除の範囲に収まります。相続税申告書を提出する必要はあるものの、本来2700万円発生するはずの相続税は発生しません。

このような相続税の観点からお客さんが全く来なくても営業をする意味があるわけです。

現在では、前述のように昔から営業を続けている古びた小売店だけでなく、最初から相続税の節税を意識した建設やリノベーションも増えています。富裕層は上がっていく税率に対して、様々工夫をして節税をしているわけです。

「駅前の古びた店」はなぜつぶれない? 客が来なくても問題無い、お店の裏側に隠されたからくり dai_conveni05_zu.jpg

イラスト/春仲萌絵

 

平野薫
1978年宮城県大崎市生まれ。宇都宮大学農学部卒業後、キユーピー、帝国データバンクを経て、現在、小宮コンサルタンツでコンサルタントチームリーダー、エグゼクティブコンサルタントを務める。
帝国データバンク調査員時代を含めこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施。苦手意識を持つ人が多い「会計」を、豊富な事例と分かりやすい言葉で教えてくれると評判を博している。国内外107の経済指標を5年以上毎月更新。経済指標と実体経済を照らしあわせて説明する経済解説に定評がある。現在も16社の企業の経営会議に参加して業績数字のチェックも行っている。数字の羅列の中から変数を見出し、会社の問題点や予期せぬ成功を発見し、経営のアドバイスを実施している。

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※本記事は平野薫著の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』(ダイヤモンド社)から一部抜粋・編集しました。
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