「認知症予防」のために5つの「脳活」。歩き方や食事など毎日できる【医師で作家の鎌田實さんが指南】

月刊誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師で作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「楽しい脳活で認知症を防ごう」です。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年12月号に掲載の情報です。

道に迷い、お釣りの計算が苦手に...

元文化放送アナウンサーで、フリーアナウンサーの梶原しげるさんが、9月放送の「徹子の部屋」(テレビ朝日系)で、アルツハイマー型認知症であることを明らかにしました。

昨年は、文化放送開局70周年の特別番組の司会をするなど、普通に仕事をしていました。

しかし、最近少しずつ異常が目立ってきたそうです。

ぼくがMC(司会)をしている「日曜はがんばらない」(文化放送、毎週日曜朝6時20分~)に出演し、認知症と気づくきっかけとなった症状についても語ってくれました。

たとえば、出張の際、宿泊先のホテルに帰れなくなった。

片腕に同時に二つの腕時計をして、人に注意された。

お釣りの計算が苦手になった。

ATMに銀行通帳を3回置き忘れた。

そんなことが起こるようになり、病院に行くと、アルツハイマー型認知症と診断されました。

梶原さんは、アナウンサー業とは別に、2000年に臨床心理学の修士課程を修了し、認定カウンセラー、シニア産業カウンセラー、健康心理士の資格を取得しています。

認知症の友人もいて、決してまれな病気ではないと実感。

ならば公表して情報交換しながら前向きに生きていこうと思ったそうです。

加齢とともに多くなる認知症

厚生労働省の患者調査では、認知症の患者は600万人。

認知症予備軍670万人を含めると1270万人となります。

脳卒中などの脳血管疾患の患者174万人と比べると、認知症が桁違いに多いことがわかります。

高齢になるほど認知症になる人が増え、80代前半の男性では6人に1人、女性では4人に1人。

90代前半まで生きると、男性は2人に1人、女性は3人に2人が認知症になると推定されています。

ある保険会社の調査では、認知症の介護年数は平均6年7カ月と比較的長期です。

在宅で介護した場合650万円、施設を利用した場合には1300万円がかかるという推計もあります。

脳活、5つの目標

では、認知症にならないためにはどうしたらいいのか?

毎日できる「脳活」を5つ紹介しましょう。

目標1 幅広歩行をする
歩幅の狭いグループは、幅の広いグループに比べて認知症発症リスクが高く、特に女性では5.8倍も高くなると言われています。

ウォーキングだけでなく、スーパーに買い物に行くときなど幅広歩行を取り入れてください。

犬の散歩は、犬にとってはいいですが、人にとっては運動量が足りません。

犬の散歩を終えた後、もう一回自分だけで幅広歩行を5分でもいいのでやってみましょう。

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幅広歩行では、歩幅を通常より5~10cm大きくして歩きます。下半身の筋肉がより刺激され、腕も大きく振るので、全身運動になります。


目標2 野菜で慢性炎症を防ぐ
認知症は慢性炎症が関係していることがわかってきました。

慢性炎症を起こさないようにするには、抗酸化力のある色のついた野菜をたっぷりとること。

具だくさんみそ汁や野菜ジュースは一日350gという目標量を突破するのにいい武器です。

目標3 魚と卵を意識してとる
脳の手前には、血液脳関門という関所があり、異常な物質が脳に入り込んで脳細胞を乱したりしないようにしています。

卵に含まれるコリンは、認知機能の維持によいとされ、血液脳関門を突破して、直接脳細胞に届きます。

一日、卵1~2個を食べましょう。

サバ、サケ、サンマ、イワシなどの青光りする魚は、血管性認知症を予防してくれます。

できるだけ魚を食べるようにしましょう。

目標4 歯周病を予防する

歯周病を起こす歯周病菌は、脳細胞の慢性炎症を起こすことがわかっています。

歯周病にならないように、口腔ケアをしてください。

電動歯ブラシを使うのも方法です。

また、自分の歯が20本以上あると、認知症リスクが大幅に下がります。

虫歯や歯周病があればきちんと治療し、自分の歯を守りましょう。

目標5 血圧、血糖値を上げない
高血圧や糖尿病は認知症のリスクを高めます。

生活習慣や薬などで血圧・血糖値をコントロールしましょう。

それには、野菜と運動が肝心です。

この連載で取り上げてきたスクワットやランジなどを毎日行うようにしてください。

朝、太陽に当たりながらの軽い運動は、夜、よい睡眠につながりやすくなります。

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ランジはまず(1)足を肩幅に開いて立ちます。(2)左足を前に踏み出し、上半身が倒れないように着地。(3)両ひざがほぼ直角になるように体をゆっくり沈み込ませます(写真)。そして左足を元に戻します。これを左右10回ずつ行います。

楽しみながら、ドリルで脳を刺激

俳優の名前がなかなか思い出せない、買い物した後、お釣りの計算がパパッとできなくなったりしたら、頭に刺激を与えてみましょう。

手軽に楽しみながらできるという点で、ドリルはおすすめです。

「ひらがな算数」というのがあります。

やってみてください。

ななたすにひくろくたすごひくいち=□

数字をひらがなで表記すると、脳が混乱します。

この混乱が脳を活性化するとされています。

答えは7です。

5□8□4=10

□に+-×÷のいずれかを入れて、式が成り立つようにしてください。

答えは、5×8÷4=10です。

『鎌田實の大人のぐんぐん健脳ドリル101』(二見書房)が10月末に発売されました。

健脳ドリルの第5巻です。

ポイントは、楽しみながらやること。

毎日5分ほど脳に刺激を与えると、いいリフレッシュにもなります。

文・写真/鎌田 實

《カマタのこのごろ》

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化粧品や健康食品のアルソアは、ぼくのラジオ番組「日曜はがんばらない」のスポンサーをしてくれています。そのアルソアが50周年を迎え、東京国際フォーラムでイベントを開催しました。そこで、ぼくも記念講演。5000人の観客が立ち上がって、いっせいにワイドスクワットを行いました。ぼくの講演会では5000人のスクワットは最大規模。実に壮観でした。


 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

2312_P119_03_W500.jpg『鎌田實の大人のぐんぐん健脳ドリル101』

(鎌田 實/二見書房)

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