おいしく炊ける圧力鍋は、高山でこそ活躍する?/すごい技術

pixta_25982842_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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●圧力鍋

普通の鍋の3分の1の時間で料理できる圧力鍋が人気だ。ガス代も節約できるし、味がよくしみておいしくなるのだ。

圧力鍋とは、文字通り「圧力をかけて調理する鍋」のことである。調理時間を大幅に短縮できるだけでなく、ビタミンや素材の色を保てて、おいしく料理できるので人気がある。

圧力鍋の構造はいたってシンプル。鍋を密封する蓋(ふた)に小さな穴をあけ、その穴の閉じ具合をおもりやスプリングで調整する。素材を入れて火にかけると鍋の内側の圧力は上昇し、この穴の調整加減で圧力は高く一定に保たれる。例えば、家庭用の圧力鍋では、内部が2気圧程度になるように調整されている。ちなみに、1気圧とは平地で受ける大気の圧力である。

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ではなぜ、圧力を高くすると調理時間が短縮されるのか。それは、鍋の中の圧力が高いと水の沸騰(ふっとう)が抑えられ、高温調理が可能になるからである。

沸騰とは、水の分子が熱のエネルギーをもらって勢いよく飛び出す現象だ。圧力が強いと分子はなかなか外に飛び出せない。そのため、圧力をかければ沸騰温度は高くなる。実際、圧力が1気圧なら水の沸騰温度は100度だが、2気圧にすると120度くらいの高温になる。つまり、圧力鍋では120度での調理が可能なのだ。調理時間が短縮される秘密はここにある。

圧力鍋は高山でとても重宝する。高度が高くなって空気が薄くなると、気圧は低くなり、水の沸騰温度も低くなってしまう。圧力鍋とは逆の現象が起きるのだ。例えば、富士山頂では空気の圧力は地上の3分の2ほどになり、水は87度程度で沸騰する。これでは、食材はいくら火を通しても生煮(なまに)えの状態になってしまう。圧力鍋を利用すれば、この問題は解決するわけだ。

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圧力と沸騰の関係は、フリーズドライという食品の乾燥保存技術にも応用されている。凍らせた物体を気圧がほとんどない部屋に置き、水分を一気に沸騰させて気化させ、乾かす方法である。栄養分の変化はほとんど起きず、水や熱湯をかければすぐに元に戻せるため、カップラーメンの具の製造などに利用されている。

 

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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