空気が読めなくても「おカネ」の話ができれば人間関係はラクになる!/発達障害の仕事術

pixta_37929451_S.jpg仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。しかし、その解決策を具体的に示した本は少ないのが現状です。

本書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハック集。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!

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前の記事「社会の中で生きやすくなる「郷に入らば郷に従え」の心/発達障害の仕事術(22)」はこちら。

 

なぜあなたの人間関係は破綻してしまうのか?

部族という社会でやっていくときに、最も重要なことは何でしょうか?どんな人間関係も、短期から中期的に必ず破綻する。そんな人生を送っている人は多いと思います。かくいう僕も、そのような人生を送って来たタイプです。

ある日突然相手が怒り出す。ある日突然相手から連絡を無視される。ある日突然連絡先をブロックされる。あるときから、飲み会に誘われなくなる。こういった辛い経験が何度もあります。

だから、人間関係を次々とホップしてこれまで暮らしてきました。ジョブホッパーならぬ、コミュニティーホッパーです。でも、そうなってしまう原因が何なのか、長らく僕にはわかりませんでした。「自分の何が原因でネガティブな結果が発生するのか」ということを理解するのはとても難しいことです。「おまえのそういうところが悪い」と直截的に指摘してくれる人というのはそんなに多くはありません。指摘してくれたとしても、それが正しいとは限りません。

しかし、固定化された人間関係の中で成果を出し続けなければならないのが仕事というものです。そういうときにどうしのぐか。これはずいぶん長いこと僕にとっての大きな課題でした。

 

起業して人間関係が楽になった、根本的理由

話は少し飛びますが、僕は起業に失敗した人間ですけれど、それでも起業をして以来、対人コミュニケーションに関しては一気に楽になったと感じました。それは、「金」というこの上なく明瞭な価値基盤を前提にした人間関係が増えたからです。

「金」は商売人にとって間違いなく共有できるモノサシです。そして、空気を読めない発達障害者の僕でも「金」ならわかる。与えれば喜ばれ、損をさせれば嫌われる。商人の合言葉は「一緒に儲けましょう」です。全員がルールの明確なゲームに興じているので、ゲームプレイヤーとしての価値を持っていれば排除されることはまずありません。もちろん、プレイヤーとしての価値がなければどんどん排除されますが、それはそれで当たり前のことに過ぎません。麻雀で言うと「ハコがワレたらトビ」というお話です。大変よく理解できます。

むき出しのビジネスの世界は、「空気が読めない」人間にある意味でやさしいと言えます。なにせ、金の流れさえ読めれば基本は大丈夫なのですから。ヒエラルキーも友好関係も利害関係も、例外はありますが、大体は要するに金の話です(とは言え、限定された情報から金の流れを読むのも簡単なことではないのですが、空気よりは読みやすいです)。

そして、多少奇矯なところのある人間でも、あるいは空気の読めない人間であっても、最終的に登場人物に利益を供与できる人間であれば好かれることが可能です。そりゃそうですよね。利益を持ってくるやつが一番好ましいに決まっている。商売しているんですから。

 

「見えない通貨」とは何か?

さて、商売人同士であれば、金という共通の価値基盤があるから極めてコミュニケーションがとりやすいということがわかりました。そして人間関係を維持する方法も明確でした。利益を与える、あるいは与える可能性のある存在であれば関係は続きます。もちろん、与える利益以上の不快感を与えるなどしていれば関係は切れますが。

一方で、金を介さない人間関係では共通の価値基盤が非常に不明瞭です。「一緒に儲けましょう」とか「あなたに(金銭的な)得をさせます」というアプローチでは、人間関係は構築できません。構築できたとしても、それは商売人としての人間関係ですね。

これが「人間関係のルールがわからない」というものの正体だと思います。あなたや僕にはよくわからない価値の体系が存在し、我々はそのゲームの中でルールもわからないままに負け続けている。そういうことでしょう。そこで、商売人がコミュニケーションの価値基盤として利用する「金」みたいなものが流通しているという仮定を考えてみました。

この、人間の間で流通する金ではない何かを僕は「見えない通貨」と呼んでいます。曖昧な人間関係も、通貨にするとわかりやすくなる。そういう意味で名づけました。例えば、あなたは誰かにちょっとした親切をしてもらった。あなたは親切をしてくれた人を訪ねて「本当にありがとうございました。助かりました」とお礼をした。これは金を介してはいませんが、ある種の取引が完了しているわけです。あなたは「お礼」という行動で「親切」という商品に対して対価を支払ったことになります。後述しますが、この「お礼」は人間社会に流通する中で最も重要な「見えない通貨」のひとつです。

もちろん、「親切にしてもらったからといってお礼をしなければならない」という決まりはありません。頼んだわけでもないことに何で礼を言わなければならないんだ、という考え方はもちろん一理あります。しかし、問題はあなたの属する、あるいは属したいと考えている共同体が「お礼を言わない」という行為をどのように捉えるかだと思います。これは、場所によっては「商品購入の対価を支払わなかった」みたいな罪科として捉えられている場合も多いですね。

そう考えてみると、「見えない通貨」による決済はかなり便利です。「ありがとうございます。感謝します」で購入可能な商品って、個人差はありますが思った以上に多いんです。「他人の親切に礼は言わない」というポリシーを実装して社会を生きていくということは、小額決済手段がひとつ封じられたも同然ということになります。皆がPASMOでスイスイ抜けて行く改札に毎回ガツンガツン引っかかることになるでしょう。

 

次の記事「「ありがとう」も通貨? 人間関係を円滑にする「見えない通貨」の使い方/発達障害の仕事術(24)」は近日公開。


借金玉(しゃっきんだま)

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。


 

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

(借金玉/KADOKAWA)

社会生活がうまくいかず苦しむ「大人の発達障害者」が増えていると言われる現代日本。発達障害によって30歳を前に人生をほぼ破たんさせかけた著者が、試行錯誤で編み出した「発達障害者のため」の今日から使えるライフハックを多数紹介! 仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。

この記事は書籍『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』からの抜粋です
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