窮地を救う軍配さばき。二人の間に「名行司」はいるか?/大人の男と女のつきあい方

pixta_35203823_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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二人の間に「名行司」はいるか

「アバタもえくぼとは、昔からいわれていることだが、人を好きになってしまうと、その人の欠点さえチャームポイントになってしまう。
だが、それとは逆に、いままで夢中になっていた相手でも、何かの拍子にその人を嫌いになってしまうと、それまで気にならなかったその人の一挙手一投足がイヤになってしまうことがある。

そうなってしまうと、男も女も勝手なものだ。「家柄のいい、リッチな男」が「親の七光、金持ちだけがとり柄の男」になり、「努力家で粘り強い女性」が「要領の悪い、しつこい女」になる。

だから、人間はむずかしい。恋愛にかぎらず、人間関係のなかでの「好き嫌い」という感情がなぜわくかなど、そう感じてしまう当の本人にもわからないことだ。なぜ好きになったのか、なぜ嫌いになったのか、突き詰めてみても、数学や物理の問題のように正解があるわけではない。また、正解を見つけたからといって何の役にも立たない。そして、何よりも見つけた答えが本当に正解かどうかさえ、検証する手立てはないのだ。

好き合っている間は検証の必要などない。正解だろうと不正解だろうと気にもならないが、厄介なのはイヤだ、嫌いだという感情が芽生えたときだ。
ほんのちょっとしたことがきっかけで、どんなに仲のいい夫婦や恋人同士でも、何かの拍子にそんな感情がわき上がることがある。当事者はそれを望んでいるわけではないにもかかわらずだ。

では、そんな感情から起こるいさかいを望まないなら、どうすればいいか。それには、当事者同士が認める「行司」を決めるのがいい。

「夫婦喧嘩は犬も食わない」とはよくいわれることだが、売り言葉に買い言葉で始まる男女の喧嘩は当事者同士だけで収めようとしても、埒(らち)はあかない。ならば、お互いが一目も二目も置く人間を判定役に持ってくればいいのだ。

豊臣秀吉は奥方との間に子どもがいなかったために、何かと正室であるねねにつらく当たった。たびたび起こるいさかいを仲介したのが、織田信長である。信長は秀吉をきつくたしなめ、ねねを元気づけたといわれている。信長に頭の上がらない秀吉は、主君信長の言とあれば、従わないわけにはいかない。ねねも信長に諭されれば、怒りも収まるというわけである。二人の間で、信長は見事な行司役を果たしたのだ。

夫婦の間のいさかいだったら、子どもがその役を果たせるかもしれない。「子はかすがい」である。

子どものいない夫婦が犬や猫などのペットを飼う効用も、そこにある。夫婦喧嘩は犬も食わないはずなのだが、本当はしっかりと食ってくれることもあるのだ。お互いがかわいがっているペットの顔を見ていれば、時も過ぎていさかいのことなどバカバカしくなってくる。

かくいう私も、息子と娘が独立して家を出たあと、妻と二人で暮らしているが、かわいいシーズー犬の華麗な軍配さばきで窮地を救ってもらったことがある。妻とて、同じ思いだったろう。わが家の「名行司」だった。

残念ながら、数年前に亡くなってしまったが、妻の落胆は傍で見ていてもかわいそうなほどだった。いまでも、私も妻もいささか寂しいのだが、険悪な空気が二人の間に流れても、愛犬のアルバムや遺影を眺めたりしているだけで、場は和む。雨のときの犬の散歩などの思い出話を相手に向けてみれば、相手も答えてくる。死んでなお、名行司の役を果たしてくれているのだ。

炎のように燃え上がった恋も、燃え上がっているうちは二人の天国だが、炎が弱まれば地獄が待っていることもある。そうならないために、お互いが信頼できる行司役を決めておくといい。

二人がかわいがっているペットがいればいちばんいいが、周囲にもそんな人がいるはずだ。二人っきりでいがみ合っていても、ロクなことはない。お互いにちょっと引いて頭を冷やしてみるためにも、行司役を見つけておいたほうがいい。そうすれば、アバタに見えていた相手の顔に、再びえくぽが見えてくる。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です
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