40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。
本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?
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「結婚」は魅力的でなくなったのか?
最近は、男も女も結婚というものに、大きな意味を感じなくなっているのかもしれない。
「結婚は個人の自由だから、結婚してもしなくてもどちらでもいい」
内閣府が行なった2009年の調査によれば、そう考える人が70%いるという結果が出た。20代、30代にかぎれば、九割近くが「賛成」「どちらかといえば「賛成」と答えている。40代で約八割、以下、年齢層が上がるほどその意見は減少する。
この設問は、自分自身の結婚について尋ねたものではない。つまり、自分はふつうに結婚するけれど、人が結婚しようがしまいがそれは自由だという人も含まれている。だから、結婚の是非については他人の自由を認めただけの数字といえるのだが、とはいえ、自分自身の生き方を含めても、絶対に結婚するべきだと考える人が減少していることは間違いない。
端的にいえば、目の色を変えて結婚を選択する必然性はそれほどないし、また、憧れも感じないという人が増えているということなのだろう。
ひと昔、ふた昔前は男も女も人生設計のパターンが、ある意味で画一的だった。男は学校を出たら会社に入ったり、家業を手伝ったり継いだりして、20代後半から30代前半までには結婚して家庭を築く。恋愛相手がいなくても、適齢期になって独身でいれば、親戚やら知り合いのおばさんやらが縁談を持ってきて見合い結婚をすすめる。実際、まわりには世話好きで、結婚のブッキングを生きがいにしているような人が一人や二人はいたものだ。
女性の場合もしかり。見合いを10回、20回もこなす女性もいた。さらに、結婚し出産しても、比較的簡単に職場復帰できる公務員や技能を身につけた女性以外は、専業主婦になるケースがほとんどだった。民間会社のOLなら、結婚即寿退社というレールが敷かれていた。自分は働きたいと思っていても、結婚が決まったことを上司に報告に行くと、
「おめでとう。で、いつまでいるの?」
などと、当然のように尋ねられる土壌があったのだ。
要は、男女を問わず、誰でも適齢期になったら結婚して子どもをつくり、夫は外で金を稼ぎ、妻は専業主婦として家を守るというのが世間のスタンダードだった時代である。さらに、婚外セックスなどはモラルを逸脱した行為のようにも思われていた。誰にも後ろ指をさされずにセックスを謳歌(おうか)するための手っとり早い道が、結婚だったのである。
だが、いまは違う。小学校低学年の女の子でも「カレシが欲しい」と真顔でいう時代。自由恋愛が花盛り。男でも女でも、結婚するまで性体験がないなどという人間は珍しい。年頃の娘が夜遅く帰宅しても、家族も隣近所の人も何ともいわない。それどころか、自分の息子や娘の恋人を家に泊めることもさして問題視しない。
こうなってくると「セックスしても誰からも変な目で見られない=結婚」の必要性は遠のくばかり。ことに女性の場合、1986年に導人された雇用機会均等法により仕事の範囲も拡大した。オフの時間の愉しみ方のバリエーションも豊富になった。仕事があって、活躍できて、お金もあるから遊べる。そうなってしまえば、結婚の意味は薄れる。わざわざ結婚して不自由な生活に身を置いて、揚げ句の果てに離婚ではつまらない。
ならば、好きなときに好きな恋人と愉しい時間を過ごして、関係がまずくなったら別れて、また別の恋人を見つければいい。
結婚は大多数の男女にとって「したければ、すれば化」したものになりつつあるということだ。極端にいえば、結婚への唯一のモチベーションは、子どもを持ちたいということだけだ。とはいっても、経済が衰退して子どもを育てる環境が年々劣化している現状では、子どもを持っても苦労が多い。そのうえ夫婦別姓が広がれば、いっそう結婚は遠ざかる。
結局、結婚することのリスクが増大しているということなのだ。大きく考えれば、時代の変化には違いない。
私自身は、高度経済成長期の恩恵を授かり、結婚生活、子どもの教育に関していえば、いまと比べると暮らしやすい時代を生きてきたのかもしれない。私が経験した結婚生活、家庭生活はおおむね幸せだった。だが、家族には悪いが、次の人生でいまのような時代に結婚適齢期を迎えていたら、結婚はしないかもしれない。それは実現不可能な仮定の話だが......。
結婚の「したければ、すれば化」は時代の趨勢(すうせい)ともいえそうだ。これでは、少子化に歯止めをかけることはむずかしい。
もちろん、結婚を選択するのは自由だ。だが、これまでの時代とは比較にならない不自由もついてくることを、覚悟しておいたほうがいい。
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1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!