「人目をはばからない女」とのつきあいは不幸の始まり/大人の男と女のつきあい方

「人目をはばからない女」とのつきあいは不幸の始まり/大人の男と女のつきあい方 pixta_17556287_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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結婚に向いている女性の選び方

「ダメですよ。向こうに子どもがいますから」
不覚にもたしなめられてしまった。その瞬間、この女性はステキだなと思った。急ぐあまり、横断歩道で信号無視をしようとしたときのことである。
「育ちがいい」人間とは、裕福な家庭で育ったかどうかではない。人間として正しいモラルをきちんと身につけているかどうかである。彼女は間違いなく「育ちがいい」女性だと感心した。

どう見てもクルマの姿はない。さほど広くはない道路を渡ろうとしたのである。だが、信号は赤。たしかに渡るのはルール違反である。

「えっ、何を杓子(しゃくし)定規なことを......」と一瞬思ったが、「向こうに子どもがいますから」という言葉に自らの行為を恥じた。子どもの前でいい年をした大人がルール違反をしたら、ルールをしつかり守っている子どもに顔向けができない。このとき、「こういう女性と結婚する男性は間違いなく幸せだな」と、私はなぜか唐突に思ってしまった。正直なところ、もしこの場に子どもがいなかったとしたら、彼女も信号無視をしたかもしれない。F1クラスの車でも飛んでこないかぎり、100%安全な状況だったからだ。これは大人の判断である。だが、子どもの前では状況が違う。大人はみっともないことをしてはいけないのである。

「子どもの目をはばかって」身を処するのは、正しい大人の流儀である。そういうことが身についている女性は間違いなく、結婚してもよき妻、よき母になる素養のある人だと私は経験上、確信している。

こういう女性とは反対に、最近は電車のなかや、人混みの雑踏のなかでものを食べる若い女性がやたらと目につく。多少、周囲に気を使って顔を隠しながらパンを口に運ぶ女性、そうかと思えば、これでもかという態度でおにぎりをほお張る女性など、みっともない所業の若い女性が多い。部活帰りの高校生が空腹のあまりパンにむさぼりついている姿もあまり感心しないが、育ち盛りの青少年のことだけに、それはわからないでもない。

だが、若い社会人の女性となると、ちょっと意味が違う。ものを食べるばかりか、メークをする女性、地下鉄に乗っている間、ずっと手鏡をかざし自分の顔をチェックしている女性、わずか数本の前髪の位置に、まるで命でもかけるように手を髪から放さないなど、最近は理解に苦しむ行動をとる女性が多すぎる。下品な女たちである。こんな下品な女性と結婚すると、男も品がなくなる。

こういう女性は「人目をはばかる」という言葉を知らないのだろう。

欧米では、人前でメークをするのはマナー違反どころか、もっとも下品な女性の行ないとされる。自分がメークしている姿を見せるのは、すでに肉体関係を持った相手の前か、それを許してもいい相手の前だけということなのだ。だから、人前でのメークは娼婦が客引きのためにする媚態(びたい)ともいわれている。欧米のルールだから、何でも従えというつもりはないが、人前でのメークは決して褒められたものではない。

これは不文律の社会的ルールであり、理屈で考えても始まらないことなのだ。私が先に「こういう女性と結婚する男は幸せだな」と感じたのはそこである。結婚して家庭を持つということは、まさにこの社会的ルールを守ることなのだ。夫の実家とのつきあい、町内会やマンション自治会の集まり、燃えるゴミと燃えないゴミの選別、子どもが生まれて学校に行くようになれば、授業参観やPTAの集まりなどなど......。枚挙にいとまがないほど、不文律の社会的ルールとつきあわなければならない。

「なぜ、あなたの実家に行かなければならないの?」 税金を払っているんだからゴミの選別なんかしなくていい」などと考えていては、暮らしてはいけないのである。結婚生活とは、従わなければならない暗黙の約束の幅を広げなくては、うまくいかないものなのだ。

このことをわかっている女性が、ズバリ結婚向きの女性である。どんなことにも無節操に従うわけではなく、自分の信条や規範にのっとって、守るべきルールに対して真面目につきあうことのできる女性なのである。人目をはばかるようなことはできない、という尺度が身についている。

人目をはばかるなどというと「世間の目ばかり気にしていてもしかたがない」という人がいるかもしれない。それは一面においては正しい。だが、世間の目の全部が全部正しくない、というわけではない。正しい世間の目と間違った目を峻別(しゅんべつ)できることが大切なのではないだろうか。

税金を払っているのだから給食費は払わない、自分の子どもを叱る先生に抗議する、子どもが深づめをしたから救急車を呼ぶ......。世間をあきれさせているモンスター・マザーたちはそれがまったくわかっていないのだ。おそらく、若い頃に電車のなかでメークをしたり、ものを食べていた女性のなれの果てだろう。

何も女性にかぎったことではないが、人目をはばかることを知らない人間とのつきあいは不幸の始まりだと思ったほうがいい。男女にかぎらず、みっともないことはするな、である。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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