間違った結婚をしないために大切な「はずみの感度」とは?/大人の男と女のつきあい方

pixta_24418851_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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結婚に必要なのは「はずみの感度」

「大事な思案は軽くすべし、小事の思案は重くすべし」という格言がある。

「武士道といふは死ぬ事と見つけたり」で有名な『菓隠』の一節である。この『葉隠』は江戸時代の中期、佐賀鍋島藩の武士・山本常朝(じょうちょう)が説いた武士の心得をまとめたものとされている。

野球のWBCの「侍ジャパン」とは違い、重々しい武士道などというと、現代人には無縁のように思われそうだが、この書には生きていくうえで参考になる教えが数多く書かれている。
この格言に即して考えれば、人生において結婚は「大事な思案」に違いないが、時間をかけてじっくり考えればベストの選択ができるかといえば、そうともかぎらない。

私の親しい知人にこんな結婚をした人間がいる。
知り合って三回目のデートで結婚を決意。お互いの両親には結婚することを約束のうえで半年後には同棲し、その一年後に結婚した。彼が数回のデートで結婚を決意した理由を尋ねたことがある。
「何となくです。まあ、強いていえば『はずみ』ですかね。彼女と結婚しておかないと一生後悔すると思ってしまったんですね。アハハハ」

はじめは結婚など考えていなかったのだが、運命の三回目のデートでベッドをともにしてから、自分では予期しなかったほど彼女に心を奪われてしまったのだという。セックスがよかったとか、実家が裕福だったなどという理由ではない。
「なぜか、彼女がほかの男と街でデートしている姿を目撃したら、きっと耐えられないなと、とてもリアルに思ったんです。だから、とりあえず結婚しかないなと......」
傍から見れば、わかるような、わからないような理由ではある。だが、その後30年、二人は子宝にも恵まれ二人の子どもを立派に育て上げた。

一方では、三年も五年もつきあって、お互い熟慮のうえに結婚したにもかかわらず、新婚旅行に向かう成田空港で離婚してしまうカップルもいる。

私が考えるに、結婚するかしないかの境目は、ひと言でいえば、一種の「はずみ」なのかもしれない。冒頭の『葉隠』の言葉になぞらえていえば、要は結婚という「大事」を前にして「軽くはずめる」かどうか、ということである。
そもそも結婚の決断など、長い時間をかけて考えれば必ず正解が見つかるというものではない。また、相手選びの正解も世界で一つというものでもない。数学の問題とは違うのだ。数学の問題を解くように結婚相手を探していたら、極端にいえば、世界中の異性すべてと結婚生活を送ってみなければ正解は見つけられないことになる。

結婚は、このような「はずみ」の後押しがなければできないだろうと思う。また、別の考え方をすれば、自分が選んだ結婚が正解か不正解かのほとんどの部分は、結婚後の二人の生き方にかかっているともいえる。一般的なケースでいえば、20年から30年しか生きていない男女がある日を境に一緒に暮らしはじめるわけだから、その時点では、人生の未開の荒野に立っているようなものだ。それぞれの人生をキャンバスにたとえれば、白いキャンバスのわずか三分の一程度に色が塗られているにすぎない。残された三分のニの白いキャンバスを重ね合わせて、今度は一緒に色を塗っていこうというのが結婚なのである。結婚という絵画が傑作になるか駄作になるかは、夫婦という名の二人の画家次第なのである。

では、パートナーの画家をどう選ぶか。
「結婚は大事だから、よくよく考えないと......」といって、結婚を意識したときからあわてて結婚相手という教材にとり組みはじめるようでは、正しい答えを見つけられない。つまり、つけ焼き刃の受験勉強ではダメなのだ。
この「はずみの感度」を敏感にするには、日頃からどういうポリシー、どういうモラルに従い、自分がどう生きるか、どういう人間、どういう女性を好ましく思うかという尺度をしつかり持つことが大切なのだ。

そのためには、知識、雑学はもちろん、実際の経験に裏づけされた人間考察力を身につけておかなければならない。それは社会において多くの人間と前向きに相対し、女性とのいくつもの交際を経験することで養われる。これこそが「小事」この小事をないがしろにせず、重ねていった人間が上質なはずみの感度を持てるのだ。
そういう人間なら、結婚という大事な思案を軽くしても、そう間違った答えにたどり着くことはないはずだ。

優れた野球選手は誰も見ていないところで猛練習をする。それがあるからこそ、一瞬の判断でファインプレーも軽くやってのける。それと同じだ。先の三回目のデートで結婚相手を選んだ彼は、上質のはずみの感度の持ち主だったということである。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です
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