普段から意識して水を飲んでいますか? 暑くて汗をかく機会の多い夏は、熱中症対策として積極的に水分を取っている人が多いことでしょう。一方、冬は汗をかくことが少ないため、水を飲むことに意識が向かない人が多いのではないでしょうか。
実は汗をかく・かかないにかかわらず、体内からは常に水分が失われています。冬は空気が乾燥していますし、エアコンなど暖房機器の使用でも乾燥が進みます。喉の渇きを自覚する前に水分補給をしないと、頭痛や倦怠感などの脱水症状につながるため、冬も意識的な水分補給が必要です。
しかしながら、水を飲めば飲むほど良いというわけではありません。過剰摂取は「水中毒」という体調不良を引き起こすためです。健康的に水分を補給するにはどうすべきでしょうか。この記事では1日に摂取する水の適正量や正しい飲み方についてご紹介します。日頃の水分摂取をチェックするきっかけにしてください。
人は1日約2.2Lの水分が体内から排出されている
わたしたちの体は100兆個を超える細胞で成り立ち、多くの水分で生命を維持しています。
体重に占める水分量の割合は以下の通りで、その内訳は約3分の2が細胞内を満たす「細胞内液」、約3分の1は細胞の周囲を満たす「間質液」や「血液」です。
成長するにつれて水分量が減るのは、脂肪がついていくため。
さらに年齢を重ねると細胞内液が減少し、体重に占める水分の割合は少なくなっていきます。
体内水分量
新生児:約80% 乳幼児:約65~70% 成人男性:約60% 成人女性:約55% 高齢者:約50~55%
これらの体液は、生命活動を維持するためにさまざまな働きをします。
例えば、血液は酸素や栄養を全身に運搬します。
また、老廃物を腎臓に運ぶのも血液の役割です。
腎臓でろ過されたのち、尿として体外に排出される水分は健康な人で約1.2L。
便にも約100mlの水分が含まれています。
また、熱で細胞がダメージを受けるのを防ぐため、体温が上がると血液中の水分が汗となって体外に排出されます。
その量は約500ml。
その他にも、肺や気道を常に湿らせるために約400mlの水分が使われます。
これらを合計すると、1日に約2.2Lもの水分が失われる計算になります。
飲み水以外に食事からの摂取や代謝によって体内で生成される水分もありますが、その量は800mlほどしかなく、失われる水分量を補うことはできません。
水不足で血液の濃度が増すと血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす原因にもなります。
そうした事態を防ぐためにも、毎日しっかりと水分補給することが大切です。
■水の1日の摂取量、健康な人で1.5~2Lを目安にする
では、1日に摂取すべき水はどのくらいが適量なのでしょうか?
健康な人が1日に失う水分量は約2.2L、飲み水以外からの摂取や体内生成する水分は約800mlで、その差は約1.4Lです。
差を埋めるために、1日1.5~2L程度を目安にすると良いでしょう。
ただし、運動や暑さでたくさん汗をかいたときは、さらに多くの水分を補給する必要があります。
■水の飲み過ぎは3Lを目安に
ダイエットやデトックス目的で、普段から2L以上の水を飲んでいる人もいることでしょう。
年齢や性別、体重、生活習慣などの違いにより、1日に必要な水分量は人によって異なります。
そのため、「これ以上は飲み過ぎ」といった明確なボーダーラインはありません。
ただし、一般的には「3L」が目安とされています。
1日に必要な水分量には、水以外の飲み物や食事から取れる水分も含みます。
そう考えると、水だけで3Lは飲み過ぎになるのかもしれません。
水の飲み過ぎは健康になるどころか、逆に「水中毒」を引き起こすリスクがあることに注意してください。
「水中毒」とは? どんな症状が出るの?
水中毒とは、水の飲み過ぎで体内の塩分バランスが著しく崩れた状態をいいます。
症状は頭痛、めまい、吐き気、倦怠感など。
重度になると意識障害やけいれんなどを引き起こし、命を落とすケースもあります。
大量かつ急激に水を摂取したために、血液中のナトリウム(塩分)濃度が低下したことが原因です。
健康な状態では、腎臓が尿の排泄量を調節することにより、体内で一定のナトリウム濃度が保たれます。
ところが、大量の水分摂取で腎臓のろ過機能が追いつかなくなると、老廃物が処理しきれなくなり、上記のような「低ナトリウム血症」と呼ばれる不調へとつながります。
特に夏は汗で塩分が流れてしまうため、水中毒のリスクが高まる可能性があります。
熱中症予防として普段よりも多めに水を飲む必要がありますが、同時に適度な塩分補給を心掛けることも大切です。
■「もしかして水中毒かな?」と思ったらどう対処すべき?
もし水を飲んでいて頭痛やめまいなどの不調を感じたら、水の摂取を控えて塩分を補充するようにしてください。
塩飴や梅干をなめたり経口補水液を飲んだりして、体内の塩分バランスを整えます。
一度に大量の塩分を取ると脳神経にダメージを与える可能性があるため、様子を見ながら少しずつ摂取するようにしましょう。
腎臓に問題がなければ、水の摂取を控えるだけでも症状は緩和します。
夏の水分補給には、真水ではなく塩分が含まれているスポーツドリンクが良いかもしれません。
汗で流れ出た水分や塩分と同時に、アミノ酸などの栄養も補給できます。
ただし、糖分とカロリーが多めのため、飲み過ぎは虫歯や肥満などにつながる可能性も。
普段は水、運動時や屋外作業などで汗を大量にかくときはスポーツドリンクといったようにシーンで使い分けてみてはいかがでしょうか。
なお、脱水による不調には、水分と塩分が体液に近いバランスで含まれている経口補水液が効果的です。
水の正しい飲み方は? 飲み過ぎ予防のためにできること
喉の渇きを潤すために、また健康や美容を意識するあまりに、1日の目安量よりも多く水を飲んでしまうことがあるかもしれません。
水分の過剰摂取は健康どころか体調を崩す原因になります。
水中毒にならないためにも、正しい飲み方を押さえておきましょう。
■水分補給はこまめに行う
水を一気に大量に飲むと、腎臓のろ過機能に大きな負担をかけることになります。
また、血液中のナトリウム(塩分)濃度が低下する恐れがあるため、水分補給する際は少量ずつこまめに行うようにしましょう。
一度にたくさん飲んだとしても、体内に吸収される量は200ml程度です。
他は尿として排出されるため、効率の良い水分補給とはいえません。
ちなみに年齢とともに増える傾向にありますが、トイレの回数は3~5時間おきの間隔で1日5~7回くらいが正常といわれています。
1回あたりの水の量や温度にも注意しましょう。
喉が渇いているときはキンキンに冷えた水がおいしく感じられますが、胃腸には負担となります。
なるべくなら20~35度くらいの常温水がおすすめ。
1回あたりの量は200~250ml(コップ1杯)程度が適量です。
体にしっかり吸収させるために、ゆっくりと飲むようにしましょう。
1日の必要量をしっかり取るために喉が渇いてからではなく、水を飲むタイミングを決めて習慣化するのも手です。
水分補給におすすめのタイミングとポイントを以下にまとめます。
起床後:体への負担が少ない常温水か白湯(さゆ)がおすすめ
食前:食事の30分前に水を飲んで食べ過ぎを予防
休憩中:気分転換に
運動中:運動前後はもちろん、運動中も15分おきに水分補給
入浴前後:入浴前に水を飲んで発汗を促し、汗で失われた水分を入浴後に補給
就寝前:寝る30分前の白湯で寝ている間の脱水を予防
■体のむくみをチェックする
水の飲み過ぎをチェックするには、体にむくみが出ていないか確認しましょう。
血液中で余った水分は毛細血管から外に出て皮下組織に溜まり、むくみとなります。
重力の関係で体の下のほうに溜まりやすいため、足のすねで確認してみてください。
足のすねを手の指で5秒ほど押し続け、指を離したときに押していた部分のへこみがすぐに戻るようなら問題ありません。
10秒以上へこんでいるなら、むくんでいる状態です。
むくみを感じた場合は、水分の摂取を控えて様子を見てみましょう。
いつまでもむくみが解消されないとしたら、何か病気が隠されているかもしれません。
その場合は医師に相談するようにしてください。
■水でうがいをする
水分を控えようと思っても、喉が渇けば水を飲みたくなるものです。
たくさん飲んでしまいそうなときは、水でうがいをしてみてください。
口の中を軽く潤すだけでも喉の渇きは緩和されます。
どうしても水が飲みたいときは、氷を口に含むのも良いでしょう。
ごくごく飲めるような冷たい水ではなく、温かい白湯を少しずつ飲むといった工夫もおすすめです。
水の飲み過ぎにも注意しよう
わたしたちの体の半分以上は水でできています。
汗や尿などで排出される水分を補うために、日頃から意識して水を飲むことが大切です。
ただし、飲み過ぎると中毒症状を引き起こすことがあり、健康に良くありません。
適量は一日1.5~2Lほど、多くても3Lが目安です。
美容や健康のために積極的に水を飲んでいる人は、飲み過ぎていないかを確認してみてはいかがでしょうか。