毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「第2話の"匂わせ"」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。
【前回】ああ、お前もか...。ヒロイン至上主義の中で惜しまれる「良識派」の愛と善一の離脱!?
本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第15週。
今週は第2話で登場した"匂わせ"と、視聴者の数々の疑問が一気に解き明かされた。
第2話では、東京から来た青柳史彦(戸次重幸)と、暢子(稲垣来泉)の父・賢三(大森南朋)、母・優子(仲間由紀恵)が3人で戦争体験について語り合い、夜に優子が涙を流す姿を暢子が見てしまう場面が描かれた。
自分たちも貧しいながら、砂川家の子どもたちに自分のおにぎりをあげ、ご馳走を差し入れる優子の無償の優しさにも、過去が影響しているように見えた。
賢三が毎朝太陽に向かって祈り、「お願いしたいことと謝らないといけないことがあるわけさ」と語っていたこともあった。
同じ沖縄モノでも、『ちゅらさん』『純と愛』が描かなかった戦争の影に冒頭から触れてくる意欲作であり、「名作」の予感がした。
しかし、そうしたシリアスさはすぐに鳴りを潜め、子役時代の1~2週が終わると共に能天気な物語に変わっていく。
第2話の涙を制作サイドが忘れているわけはなく、その「答え」は確実に描かれるだろうと待ち続けて、とうとう15週目。
お盆の最終日「ウークイ」の日に、賢秀(竜星涼)、良子(川口春奈)、暢子(黒島結菜)、歌子(上白石萌音)の4人兄妹が集合し、再婚話が浮上した優子(仲間由紀恵)の気持ちを聞こうとする。
しかし、隠し事がないかと問われた優子が語り始めたのは、戦争の話や賢三(大森南朋)との馴れ初めだった。
同じ頃、フォンターナでは房子(原田美枝子)が二ツ橋(高嶋政伸)に、鶴見のあまゆでは三郎(片岡鶴太郎)と田良島(山中崇)が過去を打ち明ける。
そこからわかってきたのは、芸人一座の下っ端だった賢三(桜田通)が、優子(優希美青)の実家の那覇の食堂に客として来たこと。
その後、賢三は本土へ出稼ぎに行き、親戚の房子に会う。
実は房子には沖縄の親戚に預けられた姉がいて、その姉の息子が賢三だった。
また、三郎に三線を教えたのは賢三で、賢三は民謡歌手になりたいと言い、那覇に戻ったが、夢かなわず、食堂の店員として働くうちに中国へ出征。
帰国後は、沖縄は日本ではなくなっていたため、すぐ故郷に帰れることが許されず、房子の商売を手伝う。
賢三の名前入りの包丁を贈ったのは房子だった。
しかし、翌年、家族の消息を確かめたらすぐ戻ると沖縄に帰った賢三が戻ることはなかった。
一方、優子は空襲で弟の秀夫と2人きりになり、収容所を転々とするが、その弟も優子の腕の中で死んでいき、一人ぼっちに。
そこに自分の家族を探しに収容所に来た賢三と再会する。
ここに来て、様々な思いが明らかになった。
優子が賢秀に甘いのは弟に似ているからだったこと。
賢秀の名が、賢三+秀夫から1文字ずつとっていたこと。
優子が食べ物を自分で食べずに人に分け与えていたのは、食べるものがなく、弟を死なせてしまったからだったこと。
暢子を預かってくれるという話を断り、房子にずっと不義理だと思っていた優子が長い手紙を書いていたこと。
さらに、田良島は10歳の頃に兄を沖縄戦で亡くしたことをきっかけに、20年前に沖縄戦の遺骨や遺品を収集する嘉手刈(津嘉山正種)の取材記事を書き、それを優子が読んで遺品収集を手伝うようになったことなど、みんなつながってくる(※沖縄にいた優子がなぜ全国紙を読むことができたのかは不明)。
それにしても惜しまれるのは、第2話の答えが描かれるまで70話以上もかかってしまったこと。
また、「戦争の話こそ子どもたちが小さな頃からちゃんと伝えるべきだ」という声はあるが、「泣いてしまって、おかしくなってしまいそうで」話せなかったという優子の思いはもっともだし、子どもたちに負の側面を背負わず、ただ幸せに生きてほしいという願いがあったのだろう。
それにしても「親の心子知らず」で、子どもたちは結果的に、平然と借金ばかりしたり、口だけ立派になったり、誰よりも食い意地が張っている子に育ってしまった。
母の過去を知り、子どもたちがどう変わるか。
ここからが本編スタートとして見届けたい。