黒豆や小豆、金柑は、古くから日本で取り入れられ薬のない時代には不調の改善のために、さまざま健康維持に、活用されてきました。それだけ栄養面で優れている食材でもあります。そしてホッと心身を和ませてくれ体にじんわりとやさしく作用してくれます。年末年始はこうした「和」を意識した行事や食事に触れる楽しい季節です。今回は、管理栄養士で料理研究家の村上祥子さんに、お正月食材「黒豆 小豆 金柑」の栄養や「黒豆」を使ったレシピを教えてもらいました。
【くろまめ】
大豆の品種の一つですが、黒い色はポリフェノールの一種アントシアニンです。植物性たんぱく質やイソフラボンなど、大豆とほぼ同じ栄養素を持ち、さらにアントシアニンの動脈硬
化の予防や内臓脂肪を減らす働きが期待できます。イソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをし、骨粗鬆症が気になる閉経後の女性には心強い味方です。漢方ではさまざまな症状改善に用いられ、民間療法では黒豆茶にして健康に役立ててきました。
【あずき】
食物繊維が豊富でたんぱく質やビタミンB群、ミネラルなども含みます。ゆでると食物繊維の利用率が上がり、腸内環境を整えるのに大いに役立ちます。また、ゆで小豆は赤ワインよ
りも豊富なポリフェノールを含み、新陳代謝の促進や冷えの改善、美肌やアンチエイジングに効果を発揮。大豆などに多いサポニンを含み、血中のコレステロールや中性脂肪の生成を抑えます。薬膳ではむくみの改善に、またビタミンB群が多いので疲労回復に取り入れられています。
【きんかん】
レモンに匹敵するほどビタミンCが豊富。皮には発がん抑制効果があるといわれるβ-クリプトキサンチンのほか、ヘスペリジンという成分が含まれ、ビタミンCの吸収を良くし、活性酸素の除去や美肌効果があります。毛細血管を強化、血中コレステロール値や血流改善などの効果も。ヘスペリジンは柑橘類の皮に多く、金柑は皮ごと食べるので無駄なく摂ることが
できます。また咳止めやのどの痛みを抑える民間薬としても用いられてきました。
村上流ふっくらつやつや
「黒豆蜜煮」
ふっくらした蜜煮を作るためには、まずは黒豆の甘煮を作ります。
甘煮ができたら、それをさらに蜜煮に仕上げます。
少し時間はかかりますが、おいしくできあがります。
100gあたり175kcal/塩分0.2g
1人分約30g/67kcal
材料(できあがり黒豆500g+シロップ800g)
黒豆...200g
(A)水...2L
(A)砂糖...200g
(A)塩...小さじ1/2
甘煮を作る
(1)鍋に(A)を入れて火にかけ、沸騰したら洗った黒豆を加えて火を止める。ふたをして、黒豆が十分に液を吸って戻り、しわがなくなるまで12時間以上おく。
(2)豆が戻ったら火にかけ、沸騰したらガーゼや不織布タイプのキッチンペーパーを落としぶた代わりに直にのせる。
(3)ふたを少しずらしてのせ、ふつふつと煮立つ程度の弱火で6~7時間煮る。煮ている間、煮汁が減ってくるので、常に豆の上に3cmほど煮汁があるように水を足しながら煮ていく。
(4)豆を食べてみて十分やわらかくなったら火を止め、そのまま12時間以上常温において味をなじませたら、甘煮の完成。
蜜煮に仕上げる
追加の材料
水...500ml
砂糖...300g
(5)鍋に水と砂糖を入れて煮溶かして冷まし、(4)の黒豆を手ですくって移し、常温に12時間以上おく。手で移すと豆が壊れたり傷ついたりしない。
(6)ふたはしないで火にかけ、弱火で30分煮て火を止めたら完成。
【お好みで洋酒黒豆蜜煮】
常温まで冷めた蜜煮にウイスキー1/2カップとホワイトリカー(35度)1/2カップを加え、常温に12時間おく。
●冷蔵で1カ月、冷凍で2カ月保存できる。
●冷凍した黒豆を解凍するときは、冷蔵庫に移して自然解凍する。
※保存容器は清潔で完全に乾いたものを利用する。
黒豆甘納豆で超時短!
「レンチン黒豆蜜煮」
煮た黒豆を乾燥させてグラニュー糖をまぶした黒豆甘納豆。
逆をすればあっという間に煮豆ができます。
水としょうゆと砂糖を加えてチン! で完成。
ミックス甘納豆で作っても楽しいです。
1人分91kcal/塩分0.1g
材料(4人分)
黒豆甘納豆...1袋(110g)
水...100ml
(A)砂糖...大さじ2
(A)しょうゆ...小さじ1
作り方
(1)耐熱ボウルに甘納豆を入れ、水を注ぎ、(A)を加えて混ぜる。ラップを表面に直にのせ、余った分はボウルの縁に沿わせるように張り付ける。
(2)電子レンジ600Wで2分加熱し、取り出して冷めるまでそのままおく。
黒豆蜜煮レシピ
黒豆おこわ
1人分225kcal/塩分0.1g
材料(2~3人分)
黒豆蜜煮(豆のみ)...1/2カップ
もち米...1合
水...160ml
作り方
(1)もち米は洗って水をきり、耐熱ボウルに移して水を注ぎ、黒豆をのせる。
(2)両端を少しずつあけてラップをし、電子レンジ600Wで4分加熱する。煮立ってきたら電子レンジ弱(150~200W)または解凍キーに切り替えて12分加熱する。
(3)取り出してざっくり混ぜる。
黒豆チーズケーキ
1人分222kcal/塩分0.2g
材料(2人分)
黒豆蜜煮...4個
クリームチーズ...60g
(A)生クリーム...50ml
(A)砂糖...小さじ1
(A)バニラエッセンス...2~3滴
ミントの葉...少々
作り方
(1) ボウルに(A)を入れ、とろりとするまで泡立てる。
(2)クリームチーズを二つに切って、それぞれ皿にのせる。
(3)(1)を(2)にのせ、上に黒豆とミントの葉を添える。
黒豆アイス
1人分176kcal/塩分0.2g
材料(2人分)
黒豆蜜煮...大さじ4
バニラアイスクリーム...140ml
作り方
(1)ボウルに黒豆大さじ2を入れ、フォークでつぶし、アイスクリームを加えて混ぜる。
(2)グラス2個に残りの黒豆をそれぞれ等分に入れ、(1)をのせる。
取材・文/石井美佐 撮影/スタジオCOM(中野正景)