人気番組「世界一受けたい授業」の出演で話題となった、ルース・マリー・ジャーマンさんの著作『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(あさ出版)。
「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。
※この記事は毎日が発見ネットで配信した記事を再構成したものです。
【前回】レストランでテーブルをきれいする日本人のおしゃれ意識/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと
マニュアルを超えたサービス精神がある
日本の女性の平均寿命が世界一であることはよく知られていますが、人口全体における平均年齢はあまり知られていませんよね。
じつは、平均年齢も日本は世界トップレベルで47歳。ほぼ同率でドイツ、イタリアとつづき、主要国で見ると、アメリカ38歳、イギリス44歳、中国37歳、インド27歳となっています(The World Factbookより)。
世界のなかでも日本は超高齢化の最先端を走っており、多くの人が言うように、これは大きな課題です。でも、私は、考えようによってはこれは日本のチャンスだと思っています。
世界でいちばんお年寄りにやさしい社会をつくることによって、日本が世界の"お手本"になることができる。その絶好の機会が、いまだからです。
長野県に「中央タクシー」という会社があります。その社長である宇都宮恒久さんのお話をうかがい、そのヒントをいただきました。
中央タクシーは、長野市民から絶大な支持を得て、県内ナンバーワンの売上げを誇っています。地方のタクシー会社の9割が赤字といわれる厳しい経営環境のなか、売上げを伸ばしつづけているのです。
成功の秘密は、徹底した"まごころサービス"にありました。お客さまの9割が電話予約によるもので、しかもそのほとんどがリピーターになるそうです。
社長は、あるお客さまの話を聞かせてくれました。
ある日、足が悪くて自立歩行がむずかしい1人暮らしの高齢女性から、社長のもとに1通の手紙が届きました。彼女は持病を抱え、週に2、3回は通院しなければならないのですが、家から750メートルほどの距離の病院へも、歩いて通うことができずに困っていました。
そんななか、短い距離にもかかわらず親切に対応してくれる、中央タクシーに助けられているとのこと。運転手さんは道路上でいったん車を停め、表門から中庭を通り、玄関までわざわざ迎えにきてくれるというのです。
「中央タクシーです。お迎えにあがりました」と声をかけ、寒さで凍えてうまく動かない指で靴を履くあいだ、静かに待っていてくれます。また、「よかったら肩を杖がわりに使ってください」と歩くのを支え、動かない重い足をそっともち上げて車のなかに入れてくれるそうです。しかも、いつもそうしているとのこと。
彼女は、「自分は醜い年寄りで、生きていること自体が人さまの迷惑なのではないかとさえ思っていた」と手紙のなかで告白します。
「でも、中央タクシーさんのおかげで、人の温かさを久しぶりに感じています。みなさんが親切に手をさしのべてくださるおかげで幸せです。感謝しています」――そんな内容だったそうです。
手紙を読んだ社長は、すぐさまお礼を伝えるために彼女の自宅を訪ねたのですが、シャッターが閉じられ、表札から彼女の名前はなくなっていました。社長は、「直接、お礼をお伝えすることができませんでした」と悔やんでおられましたが、私は静かに感動していました。
1人暮らしのお年寄りの孤独死が社会問題となるなかで、中央タクシーが徹底している「顧客の満足」は、マニュアルを超えた、人と人との心のふれあいを通じて、人を幸せにする行為です。
そして、日本が「世界一お年寄りにやさしい国」になるには、制度やシステムの整備はもちろん大事ですが、こうした人間らしい親切心をもち、1人ひとりが相手を気遣えることが、最も重要なのではないでしょうか。
いずれ、どの先進国も日本と同じ超高齢社会を迎えます。そのときに、日本が「幸福な高齢社会」のあり方を示せたら、とてもすてきな未来ですね。
中央タクシーが実践している「親切」と「気遣い」。この2つが日本の未来を明るく照らすものと信じています。
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39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります