のべ8000人以上を指導したメンタルコーチ・新井慶一さんは、仕事や人間関係、恋愛、さらにはお金まで「99%の人が会話で損をしている」といいます。会話がうまくなれば人生は好転するという新井さんの著書『100%得する話し方』(すばる舎)には、その極意「相手に9割話させる話し方」のメソッドが盛りだくさん。今回はその中から、厳選したヒントを連載形式でお届けします。
人を動かすのがうまい人は、相手に「過大な期待」をしない
では、どんな話し方をする人が得をして、どんな話し方をする人が損するのか?
事例を交えて紹介していきましょう。
口下手な人の多くは、「自分は会話で損をしている」という自覚があります。
ですから、本書で紹介するノウハウを素直に実践すれば、そのままうまくいきます。
むしろ危ないのは、「自分は話がうまい」「人に指示を与えるのが得意」「仕事ができる」という自覚の強い人たちです。
こういう人たちは、意外と大きな罠にはまっています。
一見会話で得しているように見えても、少し長い目で見ると実は損をしているのです。
ここでは、私の生徒さんNさんの例をあげてお話ししましょう。
Nさんは、とてもパワフルなスーパーサラリーマンでした。
Nさん自身がとても優秀なので、できない人への当たりは厳しかったようです。
部下を見るといつも、「どうしてこんなことができないんだろう」「こんなにできないなら、自分でやったほうがまだマシだ」と責めてばかりいたそうです。
そしてできない部下から仕事を取り上げては、自ら長時間残業をしてカバーしていました。
そんな状態だったので、Nさんにはなかなか部下がついてきませんでした。
若い時こそ評価されていたNさんでしたが、管理職になって人を育てることができないことがわかってくると、次第に会社で孤立してしまい、辞めざるをえない状況になってしまったそうです。
また、同じタイミングで奥さんとも離婚することになってしまったNさんは、私と出会った頃、心身ともにボロボロの状態でした。
そこで、私はNさんに言いました。
「人は、過大な期待をして、自分をコントロールしようとする人から逃げるものです」
この言葉を聞いたNさんは、思い当たる節があったのか、とても神妙な面持ちで私の言葉を聞いていました。
そして大いに反省したそうです。
以来Nさんは、「思い込みを捨て、相手への期待を捨て、コントロール権を相手に渡せるようになった」と言います。
するとある日突然、相手が想像を超えるパフォーマンスをしてくれるようになり始めました。
その後、彼は次々と小売業の会社を立ち上げては成功に導き、今では13の会社を経営するビジネスオーナーとして大成功をしています。
それだけではなく、プライベートではとても素敵な奥さんと巡り合って再婚し、お子さんにも恵まれました。
彼のような「舞台のど真ん中でしゃべり続けてきた人」ほど、「得する話し方」をマスターすると、人生が変わります。
自分自身は舞台の上に立たずに、「時間の多くを部下の話を聞くことに費やすようにする」。
これだけで、部下は、「この人、自分のことを大切にしてくれる」「この人にだったら、何でも話せる」「この人のために仕事をがんばろう」と、勝手に思ってどんどん働くようになっていくのです。
【得する人がやっている話し方】
思い込みを捨て、相手への期待を捨て、コントロール権を手離して話す
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