片づけのためには「モノを捨てる」必要があると思っていませんか? 5000軒以上の家を片づけてきた古堅純子さんは、「モノを捨てなくても、一生散らからない空間は実現できる」と言います。そこで、古堅さんの著書『シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)より、「夢と希望を生み出す片づけのヒント」を連載形式でご紹介します。
片づけを楽しみに変える作戦
モノに埋もれて暮らしている人は片づけが嫌いです。
なぜ嫌いなのかというと、モノを選別して、捨てなければいけないのが大変だし、悲しいからです。
モノを捨てるには、ぼうだいなエネルギーがいります。
なぜなら身の回りにあるモノは、自分が必要だと思って置いてあるからです。
要するに、そこにあるモノは基本的に自分が好きなモノたちです。
よくゴミ屋敷の住人が、どう見てもゴミにしか見えないモノを「それは私の宝物だから」とか「大事なモノだから捨てないで」と言うのは、好きなモノ、関心があるモノを集めているからです。
それらを捨てるというのは、かなりの勇気がいります。
それに「片づけなきゃ」「片づけなきゃ」と思っていると、おっくうになってますます体が動かなくなります。
「あの段ボールを片づけなきゃ」といつも思っていると、もうその段ボールを見るのも嫌になり、そのうち、段ボールごと見えない場所に隠して、なかったことにしてしまうのです。
そう、つまり片づけそのものを封印してしまうのです。
私は、高齢者やシニアの家の片づけを行うとき、義務感や強制、嫌な気持ちのまま取り組んでもらうようなことはぜったいにやりません。
そんなことをしたら、お年寄りの場合は1時間で疲れ果て、げっそりやつれてしまうからです。
下手をしたら、健康を害してしまうかもしれません。
それはとても不幸なことです。
私は、必ず片づけを〝ワクワクするような気持ち〞でスタートさせることにしています。
題して、「夢と希望」大作戦です。
まずこの家で暮らす人に「何をしたいか」、夢や希望を聞くようにしています。
きれいに片づけるのが目的ではなく、片づけることによってできる空間で、何をしたらワクワクできるかに焦点を当てて聞いているのです。
この家をどうしたいのか?
何をやりたいのか?
どういう空間にすれば、ワクワクできるのか?
片づけを始める前に、ここをクリアにすることがポイントです。
よくあるのは、「インテリア雑誌にのっているモデルルームみたいにしたい」とか、「きれいに片づけたい」という答えです。
でも重要なのは、片づけることではなく、その先です。
もし仮にモデルルームみたいな家に片づけたとしても、はたしてワクワクできるのか。
自分はどんな空間で、どんなことをしているのが幸せなのか、片づけたその先にやりたい夢があるかどうかが大切なのです。
その視点が欠けていると、せっかく空間ができても、すぐまたモノを置いてしまいます。
家をモノだらけにする人は、すきまさえあれば、すぐモノを置いてしまうくせがあるからです。
この空間は何のためにつくったのか。
この空間で何をするのが目的か。
「夢と希望を持って暮らす」という目的を忘れてはいけません。
たとえば友達を招いて優雅にお茶を飲みたいのなら、お気に入りのカップやソーサーをセレクトしてすぐ出せるようにしておく必要があるでしょう。
静かに本が読みたいなら、本棚や本を整理して、書名がわかるように並べたほうが便利だと思います。
それが、その人にとっての「やりたい暮らし」「夢と希望をかなえる幸せな空間」になります。
やりたいことが決まったらそれに合わせてモノを選んでいきます。
夢を実現するための片づけなので、片づけは夢のためのモノを選ぶ、楽しい作業になります。
「アトリエをつくりたい」という夢があれば、使っていない健康器具や、いつか着ようと取ってあるサイズの合わない服や、もらいもので趣味の合わない鍋などは「必要ない」と即座に判断できるでしょう。
今まで何となく取ってあったモノでも、やりたいことがかなえられる空間ができるとわかった瞬間、それ以外のモノは色あせて見えるのです。
夢を実現する空間に向けて一直線。
そんなワクワクがある片づけなら、今すぐとりかかろうという気になりますよね。
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