片づけのためには「モノを捨てる」必要があると思っていませんか? 5000軒以上の家を片づけてきた古堅純子さんは、「モノを捨てなくても、一生散らからない空間は実現できる」と言います。そこで、古堅さんの著書『シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)より、「夢と希望を生み出す片づけのヒント」を連載形式でご紹介します。
「空間」ができると心が動く、人生が動く
モノがあふれた家には、空間がありません。
少しでもすきまができると、そこにモノを置いてしまうからです。
モノが多い家に住んでいる人たちは、空間の素晴らしさを知りません。
だからこそ、モノを寄せて空間を出現させるという片づけが効果てきめんなのです。
モノを捨てずに、とりあえず寄せて、スペースをつくってみる。
そうすれば、今まで知らなかった空間の素晴らしさに気づくことができます。
たとえばモノだらけで、足の踏み場もないような部屋のモノをほかの場所に移動させて、すっきりした空間にしてみましょう。
「モノがあったほうが安心するの」「汚くても気にならないわ」と言っていた人でも、何もないすっきりした空間を見せると、一気に心が動きます。
モノだらけだった人であればあるほど、そのギャップに心が動くでしょう。
そして、きれいになった部屋を見て、欲がわいてくるのです。
「こんなことがしてみたい」「こんなふうに家具をレイアウトしてみよう」と、ワクワクする気持ちになるはずです。
それが前向きな意欲を生み、「もっと人生を楽しみたい」というエネルギーにつながるのです。
「なあんだ、そんなこと。たいしたことではないじゃないか」と思うのは、空間の価値を知らない人の意見です。
私たちは「空間」を甘く見すぎています。
5000軒にも及ぶ家を片づけてきた私の経験から言えるのは、部屋を片づけて、すっきりした空間ができあがったとたん、人に変化が訪れるということです。
目がキラキラして、楽しそうな表情になります。間違いなく人の心が動くのです。
積まれたゴミ袋を見ても誰も感動しませんが、生まれ変わった空間は、必ず人を感動させるのです。
おもちゃが散乱していた子ども部屋をきれいに片づけ、スペースをつくった家では、子どもたちがその場でクルクル回って喜びました。
モノだらけのリビングをすっきりさせた家では、自分の部屋にいることが多かったご主人が安堵(あんど)したようにソファーに座ってくつろぎ始めました。
食器や食料品があふれていたキッチンを、機能的に整えたときは、奥さんが涙を流して喜びました。
そして家族のためにはりきって料理を始めたのです。
モノが動くと、空間ができる。
空間ができると、心が動く。
心が動くと、人生が変わる。
モノを寄せてよみがえった空間に立ってみると、まだ何もない新居の部屋に入ったのと同じような感覚を覚えます。
これから始まる新しい生活への期待、未来への希望、ワクワク感。
すっきりした何もない空間には「ここから何かを始めよう」という意欲を刺激する不思議な力があります。
そしてこの「意欲」こそ、片づけを自らすすんで始めたいという推進力になるのです。
私が空間をつくる目的は、まさにここ、すなわち、自らすすんで何かをしたいと思う「欲望」をおこさせるところにあるのです。
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シニアの自宅を「夢や希望が持てる、幸せな場所」にするための、実践的で「目からウロコ」なアドバイスを5章にわたって解説