総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
選挙制度は主に「選挙区」「比例代表」の2つ
選挙区の「小」と「大(中)」
選挙制度は大きく「選挙区制」と「比例代表制」に分けられます。
衆議院の選挙も参議院の選挙も、この2つの制度を組み合わせる形で運用されています。
「選挙区制」は、選挙区ごとに、投票用紙に代表にしたい人の「氏名」を書いて投票し、得票数が多かった人を代表にする選挙制度です。
学校で生徒会長を決める際に行われる選挙と、ほぼ変わりません。
1つの選挙区から代表を1人だけ決める選挙を「小選挙区選挙」、1つの選挙区から2人以上の代表を決める選挙を「大(中)選挙区選挙」といいます。
「小」と「大(中)」の違いは、選挙区の広さや人口ではなく、ひとつの選挙区から選ばれる代表者の数によって決まります。
「中」と「大」に明確な違いは存在しません。
小政党からも代表を出しやすい比例代表制
もう1つの選挙制度は、「比例代表制」です。
原則として、投票用紙には「政党名」を書き、「政党ごとの議席数」を決定したうえで、個々の代表を決めていく選挙です。
選挙区制に比べ、小さな政党からも一定の議席を確保しやすい選挙だと言われています。
政党に属していない人は、比例代表選挙に立候補することはできません。
政党ごとの得票数を、「ドント方式」と呼ばれる計算方式にあてはめ、政党ごとの議席数を決めていきます。
そこから具体的に「誰」を代表とするかを決める方法は、衆議院と参議院で大きく異なります。
衆議院議員の約6割を「小選挙区制」で選ぶ
「死票」が多くなる
衆議院の選挙制度を「小選挙区比例代表並立制」と呼びます。
まず、465人の衆議院議員のうち、約6割の289名を「小選挙区制」で選びます。
「東京1区」「東京2区」......といったように、全国を289の選挙区に分けたうえで、それぞれの選挙区の代表者を選んでいきます。
1つの選挙区から1人の代表を選ぶのが、「小選挙区制」です。
どんなにがんばっても1位にならなければ当選できないため、小選挙区制は大きな政党に有利な選挙制度だと言われています。
また、2位以下の人に投票した国民の意見は、原則として無視されたことになります。
当選しなかった人に投票された票を「死票」と呼びますが、この「死票」が多くなりがちなのも小選挙区の特徴です。
かつての大(中)選挙区制は1994年に終了
衆議院は、戦後長い間、1つの選挙区から複数の代表者が選ばれる「大(中)選挙区制」を採用していたのですが、この「大(中)選挙区制」では、1つの政党から複数の人が立候補できてしまいます。
そうなると、同じ政党の候補者同士の争いになっていきます。
政党ごとに異なるはずの「政策に対する考え方」以外のところで、候補者同士の差がつくのはよくない、といった批判もあり、1994年に公職選挙法の大改正が行われ、現在の選挙制度に変えられました。
ただ、小選挙区制だけだと、死票が多くなるのはもちろん、小さな政党が代表を国会に送り込むのが難しくなります。
ということで、「比例代表制」もセットで実施されることとなりました。
衆議院議員の約4割を「比例代表制」で選ぶ
計算式で政党ごとの議席数を決める465人の衆議院議員のうち、176名を「比例代表制」で選びます。
「北海道ブロック」「東北ブロック」「北関東ブロック」......と、全国を11のブロックに分けて実施されます。
有権者は投票用紙に、支持する「政党名」を記入して投票します。
その得票数をドント方式という計算方式にあてはめ、政党ごとの議席の配分を決めていきます。
各政党は、事前に選挙管理委員会に「候補者名簿」を提出していて、その名簿には当選させたい候補者順に「順位」がつけられています。
配分の結果、〇〇党から代表を3人出せますよ、ということになったら、その名簿の上位3人が衆議院議員に選ばれます。
このシステムを「拘束名簿式」と呼んでいます。
小選挙区との重複立候補が可能
ただ、実際はもう少し複雑です。
衆議院議員総選挙は、「小選挙区」と「比例代表」の重複立候補が可能です。
つまり、小選挙区で立候補しながら、比例代表の名簿に名前を載せておくこともできるのです。
したがって、小選挙区選挙で落選した候補者が、比例代表で「復活」当選することもあります。
ちなみに、小選挙区と重複立候補している候補者は、名簿に「同一」の順位で登録することができます。
同一順位の候補者同士の争いになった場合、結果は「惜敗率」、つまり小選挙区で1位にどれだけ迫ったかで決められます。
そのため、小選挙区の「死票」が、すべてムダになるというわけでもありません。
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています