夫婦のこと、老親との関わり、子どもの成長、自身の体調の変化...50代はまだまだ悩みや迷いが多い年代ですよね。そんな50代こそ、大人の「ひとり時間」を充実させて自分らしく輝きませんか? 毎日が発見ネットの連載でもおなじみ、中道あんさんの著書『50代、もう一度「ひとり時間」』(三笠書房) より、「50代からの人生を心豊かに過ごすためのヒント」を連載形式でご紹介します。
実家の片づけで大切にしたいこと
実家の片づけで大切にしたいこと
親の介護と同じくらい、私たち世代の多くの人が直面する家庭問題といえば、実家の片づけです。
年々老いていく親は、それまでできていた掃除や片づけができなくなります。
不用品がどんどん溜まっていくのに、同じようなものを買ってはしまい込んでしまいます。
主がいなくなった子ども部屋は物置きとなり、住居スペースより物置き部屋の占める割合のほうが大きい状態でした。
わが家の場合、父が亡くなり、母を引き取って同居するようになって約4年、実家は空き家状態のまま手つかずになっていました。
それが2015年の秋、母が有料老人ホームに入所することになったのをきっかけに、ようやく重い腰を上げて、実家を片づけることにしました。
もっと早く始めていればよかったと後悔することも......。
おさえたい4つの視点
当初は、あまりの荷物の多さに、どこから手をつけてよいのやら、遅々として片づけは進まず、途方にくれるばかりでした。
それでも今は、実家の断捨離や掃除を終え、借家として貸し出すことができたのです。
そこでここでは、私の経験から、実家の片づけで大切にしたほうがよいと思った4つのことをご紹介しようと思います。
① 売るのか、貸すのか
わが家のように何らかの事情で実家が空き家になってしまった場合、売るのか、貸すのか決めなければなりません。
空き家のままにしておくと、維持・管理が大変ですし、倒壊や火災などのリスクもあるからです。
また売却する場合は、家が建った状態で売る方法と、家を壊して更地にして売る方法のどちらかを選択する必要があります。
貸す場合も含めて、それぞれにメリット・デメリットがあるので、すべてを比較して、自分たちにとって負担の少ない方法を選ぶとよいと思います。
② モノの捨て方
実家の片づけでとくに時間も労力もかかるのが、実家にある大量のモノの片づけです。
わが家の場合は、まだ母親が健在なので、はじめは母親に「いるものはどれ?」と聞いたりしていたのですが、そうすると「これも」「あれも」と、なんだかんだ理由をつけて、ほとんどのものをとっておくと言い出し、まったく片づきません。
また、自分でひとつひとつ「いるもの」「いらないもの」を分けていると、思い出の品に出会ったり、捨てるかとっておくかで迷ったりして、非常に時間がかかります。
効率よく片づけるためには、業者に頼むのが一番です。
家を借りたいという人が見つかったとき、家にあるものでほしいものがあるかを見てもらい、それ以外のものはほとんど片づけ業者に撤去してもらいました。
私が持ち帰ったのは、アルバム数冊、大鉢と湯飲み5客、数珠、妹の着物、母のアクセサリーなど10点ほど。
業者さんはわが家のものに思い入れがないので、ものすごいスピードで作業が進み、あっという間に片づきました。
業者さんに頼むときのポイントとしては、必ず数社から見積もりをとることです。
私の場合、高いところで25万円、安いところは13万2000円と、倍近い金額の差がありました。
損をしないためには、面倒くさがらず、いくつかの業者から選ぶことをおすすめします。
③ 不動産会社との付き合い方
不動産会社にとって儲けの大きい物件ならば、何も言わなくても一生懸命売ってくれるでしょうが、わが家のようにすぐに買い手がつくかわからない、儲けの少ない家の場合は、そうはいきません。
ほったらかしにされる可能性もあります。
そんなことのないように、地元で評判のよい不動産屋さんを選ぶことが大事だと思います。
その土地に住む親せきや知り合いに話を聞いて、ある程度目星をつけてから、実際に事務所に足を運び、印象のよい不動産会社を選ぶとよいのではないでしょうか。
また売り出した後も不動産屋さんの担当者に、こまめに連絡をしてくださいね。
④ 生前贈与
わが家は結局、実家を売りに出しながら、貸すことにしたのですが、まず、実家の名義を私に書き換えてから賃貸契約を結びました。
名目上は、生前贈与となります。
母の名義のまま母が家賃収入を得ることになったり、不動産売却によって収入を得たりすると、介護保険料に影響する可能性があり、翌年に負担が増えるかもしれません。
それを避けるため生前贈与にしました。
ただし、そうすると不動産取得税を支払う必要があります。
必ずしも生前贈与のほうが得だとは限りませんので、注意してください。
また、生前贈与には、相続時精算課税制度という制度があって、これを使えば2500万円以下の贈与ならば、贈与税はかからなくなります。
ただし、贈与した人が亡くなったときには、贈与してもらった財産を改めて相続したとみなし、相続税を支払う必要があります。
こういった相続や不動産に関する制度や法律は変わっていくこともありますし、すべてを理解するのはとても難しいので、専門家に相談することも必要だと思います。
私にとって荒れているようにしか見えなかった実家を、両親が生きている間に、なんとかキレイにしたかったのですが、最近になって「自分のエゴだったのでは?」と思うようになりました。
当の本人たちは何も困っていなかったからです。
とはいえ、帰ってみたら小言も言いたくなるありさま。
やさしい気持ちを保ったまま、できるだけの掃除をして帰ってくる。
住む人がいなくなってから、どうするのかを考えても遅くはないと思います。
アラフィフブロガーの、大人の「ひとり時間」を楽しむ心豊かな暮らしが綴られた一冊