人との距離を取る新しい暮らし方に慣れてきても、悩みが尽きないのが「人間関係」。これを円滑にできる方法の一つに「相槌対話法」というテクニックがあります。そこで、実践的な技術がまとめられた書籍『誰とでも会話が続く相づちのコツ』(齋藤勇/文響社)から、すぐにできる相づちの「さしすせそ」と「あいうえお」の使い方を連載形式でご紹介します。
是認欲求をくすぐるキラーワードをおさえよ
基本の相槌、「さしすせそ」の「せ」は、濁点をつけた「ぜ」の「絶対」です。
話し手は、自分の思うところを話してはいるが、それが相手に受け入れられるかどうか、心配です。
ましてや、絶対の自信はない。
自信をもって話すときも、やはり、相手の反応は気になる。
自信がないときはなおさらです。
恐る恐る話し、相手の反応をうかがうことになります。
そんなとき、聞き手から、
「絶対!」
「絶対ですね」
とタイコ判を押されると嬉しい。
これほど嬉しいことはない。
なぜなら、人には強い是認欲求があるからです。
是認欲求は、相手の人からの同意や承認によってのみ満たされる。
自分が正しいと思っていても、相手から否定されると、自信をなくしてしまうものです。
たとえ強い確信をもち、自信は維持しても、否定されたら、愉快ではない。
当然、自分の考えを受け入れない相手を好きにはなれません。
人は、自分の考えが周りの人から是認されて、はじめて強い自信と喜びをもち、そして是認してくれた人に好意をもち、信頼をし、仲間となる。
このことは対人心理学の研究でも実証されています。
そんな是認を表わす最も力強い相槌が「絶対」なのです。
「絶対」は、批判や否定や疑問を、全く受けつけない是認です。
話し手にとって、これほどありがたい賛意の相槌はありません。
自信をもっている話し手にとっても、納得の相槌でありますが、特に自信がないときは、本当に心強い相槌となります。
あなたが、「絶対」と相槌を打った瞬間に、逆に、話し手から"絶対"の信頼を得ることができると言っても過言ではありません。
相槌の「絶対」は、絶対の後に、たとえば「絶対、そうですね」と同意の相槌を続けると良いです。
「そうですね」など同意の相槌については、「基本の相槌」の「そ」のところで詳しく話しましたが、絶対が加えられると、さらに強い同意の相槌となります。
聞き手でありながら相手に印象を残すアプローチ
相手の優秀さやユニークさを評価する相槌に、「センスがいいね」というワードがあります。
「センスがいい」は、「さすが」と同様に他の人にはない能力や才能を賛美する相槌です。
「さすが」が、能力や業績に対して使われるのに対して、「センスがいい」の方は、その人の持つ、オリジナリティや芸術性など特異な才覚を評価するときに使われます。
この表現は、会社の役職などの通常の社会的地位とは違った角度から、その人の特性をほめるので、言われた人は、「よく気づいてくれた」「見えない自分の才能をみつけてくれる人だ」と、相手の審美眼に感謝して、好意を持つことになります。
あなたも「センスがいいね」と相槌を打たれた側の気持ちになってみてください。
この人は、他の人が気づかないような自分の良さがわかる人だと感じるはずです。
そして、そんなポイントに気づいてくれた相手を好きになるでしょう。
一時の成果ではなく、天性の感性をほめられるので、うれしさや感激度は倍増するという効果はあります。
センスをほめられたときは、人は大きくリアクションできないものです。
むしろ、こそばゆい、あるいは恥ずかしいといった表情をします。
しかし、表情とは裏腹に、心に深く響いています。
一言の相槌が「あの人に『センスがいい』といわれた......!」と、忘れられない一言になってくるのです。
人はよくほめられるポイントをほめられるのには、慣れてしまうものです。
いつもはほめられていないところをほめられたり、違った角度からほめられたりした方が、印象に強く残ります。
「よく目をつけてくれた!」と、そういうところに目をつけた人を高く評価し、ことさらの好意を持つものなのです。
ぜひ、相手の「おっ」と思うような一面を見つけたら、すかさず、「それ、センスがいいですね!」と相槌をうってみましょう。
【最初から読む】「すごい!」一つで人間関係の悩みがスッキリ!
コミュニケーションを円滑にする相づちのテクニックが全5章で解説されています