年賀状、今年はどうする? お金と人間関係に福をもたらす「買い方&出し方」

老後資金のために「そろそろ真剣に貯蓄しなきゃな...」と思いつつ、でも実は「お金」について真剣に考えたことはない、という方も多いのではないでしょうか?そこで経済評論家の佐藤治彦さんの著書『お金が増える不思議なお金の話』(方丈社)から、佐藤さんの実体験をもとにまとめた「人生が楽しくなるお金の捉え方」のエッセンスをお届け。まずは身近なところから「お金」について考えませんか?

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年賀状の涙

東京では、新宿駅西口の小田急百貨店と大ガードをつなぐ通り沿いと新橋駅烏森口を出たニュー新橋ビル内が、いわゆる金券屋、多くのチケットショップが並ぶ二大聖地となっている。チェーン系の金券ショップは、どちらでも大きな店舗を構えている。

金券の相場はここで決まる。

金券といっても、いろいろとある。新幹線から地下鉄、JRや私鉄の乗車券。印紙。株主優待で出されたさまざまな割引券、招待券。ファストフードやファミレスの株主に送られるお食事券、ご利用券。歌舞伎や帝国劇場などの大劇場の観劇券。ロードショーの映画などの入場券。さまざまな理由でたどり着いたビール券やギフト券、商品券などが並ぶ。

週末や平日の夕刻にふらっと前を通ると、会社帰りの人がさまざまな金券を持ち込んでいるのを目にする。たとえば、お中元・お歳暮でもらった商品券やビール券などの金券を持ち込んで現金化している。

平日の日中に現金化で訪れる人を見ていると、あきらかに業務中の会社員風情の人がいて、大きな黒カバンから大量の金券を出して現金化している。株主割引券類だけでない。

ときには会社が出張旅費で購入したであろう大量の新幹線などの回数券綴りも売却し、現金化している。切手や印紙なども同様だ。

中には領収書が出て経費として落ちる乗車券や切手などを正規に買って、それを金券屋に持ち込んで現金化する会社もあるという。バブルのときには大量のタクシー券をよく持ち込む会社があった。領収書が出ないお金を作るためだ。ウソか誠かそんな噂も出るので、金券屋さんにはちょっと独特の雰囲気がある。社会の裏と表、建前と本音が交錯している場所なのだ。

金券屋は大量の在庫が必要で、それは個人の持ち込みだけでは品薄となり、成立しない。こうした法人の大量持ち込みで、仕入れと販売のバランスを取っている。

金券屋はこれらの商品を購入して、2、3パーセントの利ざやを乗せて販売する。たとえば、全国共通百貨店のギフトカード1000円券を940円前後で購入し、970円で販売する。こうして、ギフト券を売る側は金券を現金化でき、買う側は1000円のものを970円で購入でき、金券屋は30円の利ざやを得るというわけだ。

多くの映画の前売り鑑賞券も並ぶ。といっても、超人気の洋画、たとえば『ハリーポッター』や『スターウォーズ』シリーズなどが並ぶことは少ない。スタジオジブリのアニメの前売り券も並ばない。しかし、ときにこれから公開になる映画鑑賞券が、500円から700円という格安価格で並ぶことがある。一般の入場料は1800円くらいするので、相当安い。

それらの鑑賞券の多くは束で置かれている。金券屋が50~100枚単位で仕入れたのだ。これらも企業に流れてきた鑑賞券の行き着く先だ。いまの日本映画は、多くの会社の出資で作られる。多くの会社がエンタテインメントに関わりあう。出資先には鑑賞券が流れる。また、会社の付き合いで買わされる会社もあるだろう。こうして、大量の映画鑑賞券が流通し、行き先がないチケットが金券屋にたどり着く。

しかし、足下を見られて買いたたかれる。せめて1000円くらいでもいいのにと思ったら、60歳以上のシニア割の入場料よりもぐっと下げないと売れ行きがよくないという。

新聞の拡販などに利用される美術展の鑑賞券も大量にあるのを見ると、大量にあれば拡販用のものを新聞販売店が、数枚なら購読者が現金化しようと持ち込んだと想像できる。このように、金券ショップはときにいろんな社会の縮図を映しているのだ。

年末になると、大量に出回るのが年賀状である。2017年の年末は52円の年賀状がときに45円で売られていた。どうも、年賀状の拡販を求められた郵便局員がこまって金券屋に持ち込んでいるものもあるらしい。拡販は全国的にやられているのか、一部の局でやっているのかわからないが、そういうことがあるのはどうも事実のようだ。

たしかに年賀状の拡販は、若い郵便局員はとくにたいへんだろう。時間を使って頭を下げて、なんとか同世代の友人知人に頼もうと思っても、そもそも年賀状を出す習慣があまりないからだ。ムリをしすぎて泣きついて買ってもらっても、それは人間関係の借りになり、ときには微妙な変化も生みだしてしまう。

それなら、たとえば1000枚を42円で金券屋に買ってもらえれば、1万円損するが自分の成績に傷はつかず、時間もかからず、頭を下げることも必要ない。ただ、ボーナスから1万円をこらえて支出すれば、すべては丸く収まるというわけだ。

金券屋の年賀状の相場は去年より下がった。持ち込む人が増えたのか、買う人が減ったのかはわからないが、45円の年賀状はきっと誰かが泣いて成立している価格なのだ。

金券屋は、かしこく家計を節約したいと思う人にとっては便利な場所である。しかし、私は金券屋で売られているものがなぜ安くなるのかを考えると、そこにある社会の縮図があること、ときには誰かが泣いて商品を流しているのだと思うと、少しせつなくなる。

そんな事情を知ったので、この5年あまり、年賀状は郵便局に勤める顔なじみから買うようにしている。この人から100枚、あの人から50枚と買う。SNSで知り合いに呼びかけもする。おめでたい年賀状だ。郵便局の友人から直接手に入れたら、笑顔でほっとしてくれる。そんな年賀状のほうが福が来るように思える。

金券屋で100枚で700円安く得して買うよりも、年の締めくくり、年の初めのこととしてふさわしいように思うのだ。2018年の年末に売られる年賀状は62円だそうだ。少し高くなる。きっと売りにくく、もっと買われないだろう。いったい金券屋ではいくらになるのだろうか?

価格以上に気になるのが、この年賀状という習慣が、これから廃れてなくなっていくのだろうかということだ。

1月1日、午前0時。年が改まると私の携帯電話にも着信を知らせる音がいくつもする。新年の挨拶をメールで知らせてくるのだ。ほとんどが一斉メールだから、誰に送る文章も同じだ。もちろん、若い世代からのものが多い。

夜があけて、昼前にはポストに年賀状の束が落ちる音がする。束になった年賀状を、すぐに家に持ち帰り、コーヒーを飲みながらゆっくり眺める。こちらからも賀状を出した先からのもの、出していないところからのもの、営業用年賀状だから返事は必要のないものとに分ける。そして、出してないものに、さっそく返事を書く。

年賀状とは、本来は年始の挨拶にうかがうべき方に、横着してうかがわないことをわびる書状だという。子どものころから、年賀状を出すことで礼節を尽くしていることになると思っていたので、そう知って驚いた。言われてみれば、権力のある政治家や経営者、芸事の師匠の家に年始の挨拶に行くという人はいまでもいる。

人間関係のマナーや風習も時代とともに変化していくもの。もしも、何十人もの人が新年の挨拶に訪れることがあったら、多くの人はこまるだろう。だから、年賀状では無礼だと思う人はいまやごくわずかだろうし、それでいい。

もちろん、若い人たちのあいだでは、メールやスタンプのやり取りでも十分だと思う。それに、いまやSNSなどの普及でかつてのようにご無沙汰しないですんでいる人が多いこともある。

しかし、三が日が過ぎたころに返ってくる年賀状の中に、自分よりはるかに年下の若者からもらうものに笑みがこぼれることがある。この若者には年賀状を送り送られるという風習がないのが、文面からよくわかる。全部手書きで「あけまして、おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします」とあり、それ以外の余白をどう埋めていいのかわからなく、四苦八苦した痕跡がわかったりもするからだ。

私は年賀状をやり取りする風習がとてもすがすがしく好きなので、自分より年齢の下の人でも積極的に賀状を出す。で、年上の私から年賀状をもらって、急いで賀状を買いに行き、なんとか書いて返事を出したというわけだ。その若い人の生活には年賀状を出すことは含まれていない。だけれど、年賀状を出す人から年賀状をもらったのだから、自分もそうして返そうと相手の風習やマナーに合わせて対応してくれたのだ。

一方で元日の午後に、「佐藤さん、年賀状ありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願いします」とスタンプ付きのあけおめメールを送ってくる若者もいる。若者は自分のスタイルで対応したわけだ。

賀状を書いてくる若者と、自分流のメールですませる若者を、それでどうこう区別するわけではない。仕事のやり方が変わることなどもまったくない。しかし、どちらに喜んだかは明白なのだ。

私たちの悩みの多くが人間関係だ。たいていは自分の想いが相手にうまく伝わらないことに起因する。

私はこう思っている。良好な人間関係を築くひとつの方法は、相手を笑顔にし、楽しい気分にさせることだ。

だから、誰かが気持ちを投げてきたときに、どうやって投げ返すかはとても重要だと思うのだ。そのとき相手の流儀に合わせるか、自分のやり方で進めるか。どちらが相手は喜ぶか、答えは明白だと思う。

もうひとつ言うと、気持ちを伝えるのには、ひと手間かけたほうがいい。だから、メールより年賀状の方がいいと思う。気持ちを伝えようと、時間と手間をかけたやり方をしたほうが、相手に気持ちが伝わると思うからだ。

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佐藤治彦(さとう・はるひこ)

1961年生まれ、東京都出身。経済評論家。慶應義塾大学商学部卒、東京大学社会情報研究所教育部修了後、約5年間JPモルガン、チェースマンハッタン銀行勤務。退職後は金融誌記者、国連難民高等弁務官本部でのボランティアなどを経て独立。各メディアで、コメンテーターとしても活動中。

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『お金が増える不思議なお金の話―ケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』

(佐藤治彦/方丈社)

貯金できない人の最大の原因、それは「お金との付き合い方を間違っている」こと。ケチらず使って心を豊かにすれば、「きっとお金は自然と増える!」という経済評論家のエッセイ。実体験をもとにまとめた20のエピソードで、楽しくおトクにお金のことが学べます。

※この記事は『お金が増える不思議なお金の話―ケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(佐藤治彦/方丈社)からの抜粋です。

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