「食器は水ですすがない!?」日本人が驚く世界の「家事」

「近所の人が非常識で...」といった悩みを耳にすることもあるはずです。でも、世界に目を向けると、「パジャマで外出」「50歳でもお年玉」など、私たちが驚いてしまうことが「あたりまえ」として行われています。そこで、文化人類学者・斗鬼正一さんの著書『開幕!世界あたりまえ会議』(ワニブックス)から日本ではありえない驚きの常識を連載形式でお届けします。

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洗濯物を外に干すのは恥ずかしいこと

日本では洗濯物は建物と平行に物干竿などに干しますが、香港やシンガポールの古いアパートでは窓から縦に何本も鉄の棒が突き出ていて、この棒に洗濯物を通して干します。棒は外せますから、傾ければ洗濯物が滑ってきて取り込むのにも便利で、日もよく当たる優れものです。

こうして超高層アパートに洗濯物が一斉に干されてはためくさまは壮観なのですが、アメリカ人の目にはこれがスラムに見えてしまいます。アメリカでは洗濯物を外から見えるところに干している家があると、不動産の価値が下がってしまうなどと嫌がられます。町の景観の統一感を重視するアメリカ人からすれば、外に洗濯物を干すと美観が損なわれますし、乾燥機を買えない貧しい人が多い地域と思われてしまうというのです。

そういえばアメリカ人は洗濯物を乾燥機で乾かし、ベッドのマットレスや布団も日に当てて干すことがありません。洗濯物も布団も、家族が身に着けたり寝たりするものですから、他人に見えるところで干すのは恥ずかしいことと考えるのです。そんな人たちの目には香港、シンガポール、そしてマンションのベランダに洗濯物が翻(ひるがえ)る日本も、スラムに見えているのかもしれません。

【日本人からしたら...】天気のいい日は外に洗濯物を干しているけど、そんなふうに見えているとは

皿はすすがず洗剤が付いた状態で拭く

ニュージーランド人の食器の洗い方は、随分と大雑把です。日本人なら洗剤を付けたスポンジで丁寧に洗って流水ですすぎ、布巾で拭きとるか自然乾燥させるのが常識です。

ところがニュージーランド式では、流しに湯を溜め、洗剤を流し込み、脂っぽいものもそうでないものも食器を全部放り込み、柄の付いたスポンジで軽くこすり、水切りに立てます。後はタオルで拭くだけ。つまり、すすがないのです。

これでは汚れが十分に取れず、濃厚な洗剤も付着したままで、カップに紅茶を注ぐと洗剤の泡が見えることもあるほどです。高級レストランでも同じで、皿に洗剤を拭いた跡が見えて食欲がなくなることもあります。

日本人からすると汚いと感じてしまいますが、ニュージーランド人にすれば、これこそ水を大切にした、きれいな洗い方なのです。だから、ホームステイ先で、日本式にちゃんと洗った食器に、ホストファミリーがわざわざ洗剤を塗り直して拭いているのを目撃しても驚いてはいけません。何しろ、家族と犬の食器が共通という家もあるくらいですから、この程度で驚いていてはやっていけないのです。

【日本人からしたら...】ニュージーランドの人からしたらきれいなのかもしれないけど、泡立った紅茶は嫌だな......

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イラスト/てぶくろ星人

「食器は水ですすがない!?」日本人が驚く世界の「家事」 あたりまえ会議.jpg「男女」「生活」など5つのテーマで、世界中から集められた83の"驚きの常識"が!世界から見れば、日本も意外と非常識のようです

 

斗鬼正一(とき・まさかず)

1950年、鎌倉生まれ。文化人類学者。江戸川大学名誉教授、明治大学大学院・文学部兼任講師。明治大学大学院修了。熱帯ジャングルのヤップ島からコンクリートジャングルの香港、東京まで、旅と街歩きで「人間という人類最大の謎」を探検する。

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『開幕!世界あたりまえ会議―私の「ふつう」は、誰かの「ありえない」』

(斗鬼正一/ワニブックス)

「うんこで手を洗う」「石を食べる」などなど、世界を旅して“人類”を研究する著者が、愛すべき世界の人々の“あたりまえ”を集めた人間讃歌の一冊。暮らしから人間関係まで、信じられない83もの常識がラインアップ。多様性が叫ばれる中で「普通とは何か」ということを、ポップなイラストと共にわかりやすく教えてくれます。

※この記事は『開幕!世界あたりまえ会議―私の「ふつう」は、誰かの「ありえない」』(斗鬼正一/ワニブッス)からの抜粋です。

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