思いや考えていることが「言葉」でうまく伝えられない――。そんな悩みを抱えるあなたのために、フリーアナウンサー・馬場典子さんの著書『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』(あさ出版)から、アナウンサーが実際に使っている「話し方のテクニック」を連載形式で紹介します。あなたの言葉と心が、もっと相手に伝わるようになりますよ。
ナレーションに見る話し方の基本
話し方の基本となるナレーションの技術は、大きく分類すると、4つの要素があります。
1.高低(音の高さ・低さ、抑揚)
2.緩急(話すスピード、リズム)
3.強弱(音の大きさ・小ささ)
4.間
私たちは普段から、この4つの要素を無意識に組み合わせているのですが、組み合わせ次第で印象が変わります。一例を挙げてみると......。
芸人さんの多くは、高く、速く、話します。
「元気」「楽しい」「勢い」
幼稚園や保育園の先生の多くは、高く、ゆっくり、話します。
「明るい」「優しい」「大らか」
リーダーの多くは、低く、速く、話します。
「力強い」「切れ者」「勇気」
大御所やご意見番は、低く、ゆっくり、話します。
「説得力」「知性」「安心感」
ところが、緊張していたり、慣れていなかったりすると、音が高いまま、弱いまま、同じスピード、同じ間合い......といったように単調になりやすいので、注意が必要です。
メロディにいろんな音階があり、強弱があり、いろんな音符や休符の長さがあるように、話し方も、音の高低や強弱、スピードや間に変化があるほうが、聞きやすく、人を引きつけます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
話し方のTPO
服装にTPOがあるように、伝わる声や話し方も、場面ごとや伝えたい内容などによって変わります。高低・緩急・強弱・間を変えるだけでも、印象が変わります。
1.高低(抑揚)
高い声は、明るさ・元気のよさ
全体的に高めの声で話すと、声が通りやすく、聞き手の気持ちも明るくなります。聞き手が多いとき、会場が大きいとき、華やかな場などに。部分的に高い音にすると、その言葉を強調できます。特にスローガンなど、勢いのある言葉に向いています。
低い声は、落ち着き・信頼感
全体的に低いトーンで話すと、落ち着いた印象を与え、ぐっと惹きつける効果もあります。少人数のとき、じっくりと話すとき、説得したいときなどに。部分的に低い音にすることでも、その言葉を強調できます。特に含蓄のある言葉、肚(はら)に落ちる言葉などに向いています。
2.緩急(話すスピード・リズム)
速いスピードは、テキパキとした印象
全体的に速く喋ると、デキる人という印象を与え、聞き手の気持ちを上げる効果もあります。部分的に速く話すと、その部分に軽やかさが出ます。楽しい話題や、勢いをつけたいときなどに向いています。
ゆっくりとしたスピードは、安心感
全体的にゆっくり話すと、優しい人、または、頼れる人という印象を与え、聞き手に安心感や信頼感を与えることができます。部分的にゆっくり話すと、その言葉が印象に残りやすくなります。大切な言葉や、言い含めたいときなどに向いています。
3.強弱
大きい声は、力強さ
全体的に大きな声で話すと、元気でパワフルな印象になります。鼓舞するとき、注意を引きたいときなどに向いています。部分的に大きく話すと、その言葉にインパクトを与えることができます。
小さな声は、優しさ
全体的に小さな声で話すと、耳を傾けさせる効果があります。距離が近いとき、少人数のときなどに向いています。相手が大勢のときでも、注意を引きつけることがあります。部分的に小さく話すと、その言葉の存在感を浮き彫りにすることができます。
4.間
お笑いでも、「間」一つで面白さが倍増したり半減したりします。今大人気の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)も、一番のミソは「間」だと聞いたことがあります。編集の最小単位は一コマ約0・034秒。わずか一コマ早いだけで、視聴者はついてこられない。反対に一コマ遅くても、先を読まれてしまう。企画、出演者、素材(撮影したもの)を最大限に生かせるかどうかは、タイミングを狙い澄ました「間」にかかっているのです。
楽譜の休符は、長さもタイミングもいろいろですが、会話の「間」も同じ。特に、強調したいところ、注目してほしいところの前か後ろに適度な間を入れると効果的です。
7章からなる本書では、著者がアナウンサー研修で実際に学んだトレーニングのほか、「話し方の心・技・体」という3つテーマで実践的な技術が学べます