『弱者男性1500万人時代』 (トイアンナ/扶桑社 )第1回【全5回】
「弱者男性」という言葉を知っていますか? いまや日本人の8人に1人が該当するというこの言葉は、インターネットの世界から生まれた「独身・貧困・障害」などの「弱者になる要素」を備えた男性のことを指します。 弱者男性は偏見にさらされることが多いうえに、弱者男性から抜け出すことも困難と言われています。弱者男性を取り巻く環境の「リアル」とはどのようなものなのか? ライター・経営者のトイアンナ氏の著作『弱者男性1500万人時代』から、その実態を見ていきましょう。
※本記事はトイアンナ著の書籍『弱者男性1500万人時代』(扶桑社)から一部抜粋・編集しました。
一見エリートでも、家族起因で弱者側に追い込まれる男性......関口さん(仮名)・IT企業勤務
弱者男性はなぜ生まれるのか。その起源を調べていくと、常に見え隠れするのは「親の問題」だ。たとえば、取材に応じてくれた関口さん(仮名)は、親族によって弱者へ引きずり下ろされる人生を歩んでいた。
「有名国立大学を出て、外資系企業で働きました。それからさらに転職し、今はIT企業でファイナンスを担当しています」
カチッとしたシャツに、メタルフレームのメガネが光る。その姿にふさわしい、キラキラのエリート街道。しかし、その経歴には陰の一面がある。関口さんの叔母にあたる人物が、祖父母の資産をすべて引っ張り借金までさせて男に貢いだ末に、男の無理心中に巻き込まれて殺害されたのだ。周りに隠して娘に大金を流した祖母と、亭主関白で家のことなど何も知らない祖父。姉である関口さんの母がそれを知ったときには、すべてが終わっていた。
「だいたい15歳ごろですね、自分の家の状況を把握したのは。家の借金を返済することになるんだろうなと、ぼんやり思っていました」
関口さんの初年俸は約500万円。平均を大きく上回る額だが、その大半が借金の返済に消えた。