東京も2020年4月に予定。全国的に加入の義務化が進む「自転車保険」の基礎知識

全国的に加入の義務化が進む「自転車保険」。この自転車保険は、私たちが事故に遭った場合、助けになるのでしょうか? 交通事故に詳しい弁護士の梅澤康二先生にお聞きしました。

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被害者の救済が自転車保険義務化の目的

自転車の利用者に対し、自転車事故を起こした場合に被害者を救済するため、自転車保険への加入を義務付ける自治体が増えています。

大阪府では2016年7月から始まり、東京都でもこれまで努力義務だったのが20年4月より義務化予定など、下の表のように、全国的に広がりつつあります。

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警察白書を見ますと、自転車事故の発生数自体は、全国的には減少傾向にあります。

ではなぜ、いま自転車保険の義務化が進んでいるのでしょうか?

その大きな理由としては、近年自転車事故によって、加害者に高額な賠償を命じる判決が続き、改めて自転車事故による危険性が注目されたことが挙げられます。

中でも注目を集めたのが、13年7月に神戸地裁が下した判決です。

事故当時小学生だった少年が乗った自転車と、60代だった女性が衝突し、女性がその後寝たきりになり意識が戻らない、という自転車事故でした。

判決は、少年に対する「監督義務を果たしていない」などとして、少年の母親に約9500万円の賠償を命じるものでした。

ほかにも自転車事故で数千万円単位の賠償が命じられる判決がいくつかありました。

しかし、加害者側がそれを支払うだけの資産を持っているとは限りません。

ですので、万が一重大な自転車事故が起きた際に被害者を救うために、自転車保険の義務化が進んだのです。

交通事故に詳しい弁護士の梅澤先生は、「ほかには、自転車の性能が上がっていることも、自転車保険義務化の背景にあるでしょう」と、指摘します。

最近、ロードバイクなどスピードの出る自転車で町中を走る利用者の姿をよく見かけます。

もしあのスピードで歩行者と衝突したら、重大な事故になるでしょう。

また、普及が進んでいる電動アシスト付き自転車も、その一つかもしれません。

このような状況を考えると、無保険の自転車が町中を走っているという状況は非常に恐ろしいものだと思えてきます。

もし仮に、歩行中に無保険の自転車利用者と衝突し、けがを負い、通院や入院で多額の治療費が必要になったと考えてみましょう。

「その場合、民事裁判で損害賠償を求めることは可能なのですが、問題は加害者が賠償するだけの資産を持っていない場合です。家や土地があれば、それを売って賠償してもらうことも可能ですが、それもない場合は、細々と払い続けてもらうことしかできません」(梅澤先生)

けがをしても、加害者が無保険だと、治療費の支払いさえ滞るケースがあるというのです。

「このような問題から住民を守るために、各自治体が自転車保険の義務化を進めているのでしょう」(梅澤先生)。

後遺症を負った場合は要注意!

では、自転車保険への加入が義務化になると、それで安心なのでしょうか。

「損害賠償を求めてもなかなか支払われない、ということからは守られるでしょう。その点では、自転車保険の義務化には大きな意味があります」と、梅澤先生。

しかし一方で、「ただし、注意すべきケースもあります」と続けます。

それは、自分が被害者で、後遺症を負った場合です。

自動車事故の場合ですと、後遺症に関する損害賠償は、損害保険料算出機構という機関から後遺障害等級の認定を受け、それを基に算出する、というのが基本になります。

裁判所も、この認定を尊重してくれることがほとんどだそうです。

「しかし、自転車事故の場合は、この機関で審査を受けることができないのです」(梅澤先生)。

そのため、自転車事故で後遺症を負った際は、自ら裁判所で加害者に対して訴訟を起こし、病院の診断書などを用意して、後遺障害を裁判所に認定してもらわなければなりません。

「これは、個人では大変です。弁護士に依頼する方が良いでしょう」と、梅澤先生。

自転車事故では、後遺症のための治療費を確定させるために、訴訟が必要な場合もあるのです。

ただし、これまでは治療費を払ってもらえるかどうかも怪しい、という事例もありました。「自転車保険の義務化により、後遺症が認定されれば、保険で治療費などは支払われます。少なくともこれまでよりは、被害者の救済に結びつくはずです」と、梅澤先生は自転車保険の義務化の意義を強調します。

身近な分、自分が被害者にも加害者にもなり得るのが、自転車事故です。

すでにいくつもの損害保険会社が下の表のように、さまざまな保険のプランを販売しています。

個人のみか家族も対象なのか、損害賠償金の補償のみなのか、自分や家族のけがも補償するものかなど、プランにもよりますが、月々数百円程度で加入できます。

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また、すでに自動車保険に加入済みの場合などは、その特約で自転車保険が付いている場合もありますので、いま加入している保険を見直してみるのもいいでしょう。

こ~なる!暮らしへの影響

▽無保険の自転車利用者が事故を起こした際、被害者への損害賠償が滞ることを防ぐため、全国的に自転車保険の義務化が進んでいます。
▽自転車保険に加入していれば、事故を起こし、けがを負わせても、損害賠償金を補償してくれます。
▽補償額はプランにもよりますが、1億~数億円が多いです。
▽すでに加入済みの自動車保険の特約などで、知らない間に加入している場合もあります。

構成・取材・文/仁井慎治

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<教えてくれた人>

弁護士法人プラム綜合法律事務所
代表弁護士
梅澤 康二(うめざわ・こうじ)先生

1983年生まれ、東京都出身。東京大学法学部卒業。在学中の2006年に司法試験合格。アンダーソン・毛利・友常法律事務所での勤務を経て、14年に独立。交通事故のほか、労務関係全般や相続問題などが業務分野。

この記事は『毎日が発見』2019年12月号に掲載の情報です。

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