いつまでも、若々しく健康でありたいと願うのは人として自然なこと。そして、健康を願うほど、具体的にどんなことに気を付けたらいいのだろうという疑問は膨れあがっていく。
そんな時、ぜひ読んでほしいのが健康長寿と食生活の関係を解き明かした『80代現役医師夫婦の賢食術』(家森幸男/文春新書)だ。
※本記事はダ・ヴィンチWebの転載記事です
『80代現役医師夫婦の賢食術』(家森幸男/文藝春秋)
医学博士である著者の家森幸男氏は、京大名誉教授であり武庫川女子大学国際健康開発研究所の所長。日本にカスピ海ヨーグルトを広めた人物で、約40年にわたって世界の長寿地域と短命地域を訪問。現地の人が食べているものを調べ、食と健康、長寿の関係を科学的に研究してきた。
本書は、雑誌『文藝春秋』で連載していたものに「健康長寿食実践編」を加えた一冊。
自身の研究で分かった"世界最高の健康長寿食"と、家森家で日々実践している誰でも簡単に食生活に取り入れやすく工夫した食べ方を紹介し、「健康寿命は食べ物によって延ばせる」と訴えかけている。
健康寿命を延ばすカギは「4つの食品」にあった!
日常生活が制限されることなく元気に過ごせる「健康寿命」は脳卒中や認知症、骨粗しょう症などの発症により、阻害されてしまう。
だが、そういった病気と食生活との関係が分かれば、誰でも自分で健康寿命を延ばすことができるのだと家森氏は訴える。
家森氏いわく、健康寿命を延ばすカギは「塩」「魚介類」「大豆」「ヨーグルト」という4つの食品だそう。
本書では、それぞれの食品がどのように体によく、なぜ健康長寿食と言えるのかを分かりやすく説明している。
例えば、様々な地域での実験によって、タウリンの摂取量が多いほど心筋梗塞による死亡率が低いことを突き止めた家森氏はタウリンが豊富な魚介類を摂取することの大切さを説く。
心筋梗塞を予防するだけでなく、他にも様々なメリットが得られる魚食。
より積極的に、摂取していきたいものだ。
ただし、魚介類を健康長寿食にするには、食べ方も重要なのだとか。
魚を刺身で食べる時は、べったりと醤油を付けず、わさびを少しだけ付けて食べるのがおすすめ。
焼き魚や煮魚にすると塩分が増えてしまうため、調理法は"蒸し"がよいなど、健康寿命を延ばす賢い食べ方について詳しく説明されている。
塩分摂取量が多い日本人にぴったりな食品は「ヨーグルト」
また、本書では世界の短命地域の共通点として、塩分摂取量が多いことを挙げて説明している。
減塩の大切さが叫ばれて久しいが、実際、日本人の塩分摂取量の平均は男性10.9g、女性9.3g。WHOが目標値としている1日5g未満や、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に記されている男性7.5g未満、女性6.5g未満には、まだまだ遠い。
だからこそ食事に取り入れたいのがヨーグルト。
著者によれば、ヨーグルトはカリウム、カルシウム、マグネシウムが多く含まれており、塩分を摂取することで現れる"塩の害"を抑えてくれるのだそう。
他にもヨーグルトには様々な健康効果があり、著者はヨーグルトと健康長寿とは深い関係があるため、「一石四鳥」くらいの食品であると考えている。
食卓に取り入れるヨーグルトは手作りのものでもOK。市販品の場合は無糖を選び、ヨーグルトの菌との相性には個人差があるので、少なくとも1週間ほどは同じ種類のものを食べ続け、便通がよくなるなどの効果が感じられるか様子を見よう。
なお、トッピングに、健康によい食材「ま・ご・わ・や・さ・し・い」(大豆など豆類、ごまやナッツ類、ワカメなど海藻類、野菜、魚介類、しいたけなどのきのこ類、いも類)を意識することをおすすめしており、その理由も詳しく解説されている。
著者はバナナなどの果物もトッピング。
オリジナルの味わい方を探しつつ、健康長寿を目指してみてほしい。
本書にはほかにも、著者が様々な地域で見た体の健康と心の健康を守るコツや、今すぐできる健康長寿食20のヒントも収録。
小児科開業医である妻の百合子さんと行っているリアル健康実践生活も夫婦の対談で明かしている。
また、百合子さんが毎日作る「健康長寿弁当」も写真付きで紹介しているので必見だ。
私たちの体は、口にした食べ物でできている。1日でも長く自分らしく元気な日常を送っていくためにも、ぜひ本書を活用し、毎日の食生活を見直してみてほしい。
文=古川諭香