自分で作った半畳のお座敷で酒のさかなを作っていた母/鈴木登紀子さん愛の料理(2)

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お道具は大事。例えば、布巾はケチっちゃだめね

登紀子ばあばは、お母様が使っていた昔ながらの台所風景も鮮やかに覚えています。「いまみたいに蛇口をひねってもお湯は出ないから、布巾も目的ごとに分けていましたよ。お膳を拭くもの、お茶わんを拭くもの...。おわんの2度拭きの仕上げは"もみ"で。薄絹でできた赤いきものの裏地なんですよ」

もみ、初めて聞く言葉です。「上等な漆を、それでひざを折って拭いていたの。右手と左手で器をしっかり持って、丸く、丸く、引っ張らずにくるくる回すんです」ばあばのキッチンにも常に布巾がいっぱい。清潔に洗っては使い分けています。

  

自分で作った半畳のお座敷で酒のさかなを作っていた母。いまもお手本なのよ

「他にも工夫があったわ。板の間の台所に、畳替えしたときに残しておいてもらったきれいな一枚の表畳を、二つに折って敷くの。古くなったきものの服の端切れで縁取りをしてね。半畳のお座敷です」

お母さまはそこで何を?「七輪と大きなまな板を置いて、毎日2時間晩酌する父のために、酒のさかなを作っていました。いっぺんには出す父が喜ばないから、1品ずつ作ってね、できると私が運ぶわけよ。父もまた私に"あーんしなさい"なんて言って。母が作ったその酒の肴を口に入れてくれてもらうがとってもうれしかったわ」

お父様が食事を楽しむ姿も忘れがたい思い出。料理を作る上での基本なのです。「その記憶があるからかしら、私、何が食べたい?って食べる人に聞くのは好きじゃない。相手の顔を見て、四季折々の季節と彩りを考えて作るものだと思っています。食べた時の表情を見ればわかるじゃない? 好きなんだと思えば、それをまた作ればいいんです」

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ばあばが愛用している布巾。タオルは器を拭くため、ガーゼは器を2度拭きする時や片栗粉をかぶす時、さらしは塩もみした野菜を絞る時、ワッフルは台拭き。模様付きのものは手を拭くためにエプロンにぶら下げる。

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<教えてくれた人>
鈴木登紀子(すずき・ときこ)さん
1924年、青森県生まれ。46歳で料理家デビュー。家庭料理と美しい作法を伝える。テレビ「きょうの料理」(NHK・Eテレ)出演は40年を超える。著書多数。
この記事は『毎日が発見』2017年10月号に掲載の情報です。
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