必要なのは成功体験!パワハラ上司にならない「ほめ上手」になる方法

身近な社会問題として注目を集める、パワハラ=パワーハラスメント。今や労使紛争のトップになったパワハラは、どうすればなくせるのでしょうか。カギとなるのは「命令する上司」から「動機付ける上司」への転換。10万人以上に講演・指導を行ってきた和田隆さんの『パワハラをなくす教科書』(方丈社)から、これだけは知っておきたい「パワハラをなくす方法」について、連載形式でお届けします。

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仕事の意味付け

部下の能力や欲求と目標を重ねることも重要です。部下の欲求と合致した目標は、部下にとっては「意味のある目標」になります。欲求とはまったく関係のないものですと、意味のない目標になります。意味のない目標を人間は真剣に追いかけません。

普段から観察していると、部下が「この仕事、意味ないな?」と感じる業務でも、部下の仕事に対する価値観につなげて意味付けしてあげることができるはずです。

例えば、仕事に成長を求めている部下であれば、「毎年、この仕事を担当した人は、みんな、最後は『成長した』と言っているよ」と言い添える。

自分の能力を伸ばしたいという部下なら、「この仕事は、自分ではやりたくない仕事かもしれないけれど、〇〇さんが望んでいた能力開発につながるよ」と伝えてあげる。

部下の働くことに対する価値観を知り、求めていることを探り、それを仕事と結びつけるのです。意味付けしてあげれば、それが自分の目標に置き換わります。

マネジメントというのは、個人の目標と集団の目標を重ねるプロセスが不可欠です。それが動機付けるということでもあるのです。

達成感を自己効力感へ

上司が「目標を達成するのは当たり前」という態度では、部下を動機付けることはできません。高めに設定した目標を成し遂げたとき、達成感が生まれますし、成果をキチンと評価することで、部下の自己効力感をあげることができます。自己効力感とは、自分の能力に対する自己評価のことです。「自分はここまでできるんだ」「もう少し、やれそうだ」という自己効力感は次への意欲につながります。

人間は達成感だけでストレスを減らすことができます。加えて、何かを成し遂げると、脳内物質のドーパミンがでて「気持ちがいい」という感覚を得ます。そして、その気持ちのいいことを繰り返そうとする。再び、チャレンジしようと意欲的になる。

目標を定めたら、評価することが大事なのです。同時に、目に見えない部分を認めることも必要です。

「年間の目標がクリアできた」。これは定量的な目に見える目標です。それは正当な評価として大事ですが、観察によって得た情報を使って、目標を達成したときに、定性的な評価もしてあげるとさらに効果的です。定性的な評価とは、質への評価のことで、部下自身が持つ特質のことです。

「君がいかにお客様を大事にしているかということがわかったよ」「心を込めて接客していたね」こうした定性的な評価は、目に見えないぶん、定量的な評価よりもうれしいものです。

「やっぱり、自分はお客様を大切にできているんだ」と自己を肯定的に解釈することになりますし、上司が褒めてくれるということは、自分にとって強みなのではないかとも思える。新たな自分を知ることができるわけで、自己肯定からさらに進んで、新たな自分を発見することもできます。目に見えないところまで認められると、存在欲求、承認欲求も満たされます。

ここまでのことを実践し、継続できたら、部下に内発的動機付けが生まれていることでしょう。しかし、さらに定着させるため、次の目標に対しての動機付けを行っていきます。チャレンジさせた高めの目標が、話し合いのうえで設定したものだとしたら、次は部下自身に目標設定をさせるのです。

「今回はうまくいったけれど、ちょっと様子見たいな」と、部下が自分で低めの目標設定をしたら動機付けにはなりません。自ら、再び挑戦となる目標設定をさせるために、「成長著しい〇〇さんは、次はどんな目標を設定するんだい?」といったふうに、問いかけるのです。

ここでも、問いかけです。高い目標を設定し、クリアする喜びを知り、さらに上を目指す。この繰り返しにより、常に今よりも高いところを目指して自ら動機付けられて動くようになる。目標設定はとても大事なのです。

スモールステップ法でご褒美をこまめに

目標設定の期間をどう設定するのかにも、コツがあります。年間を通じた目標が一般的だった頃と比べると、今では半期、四半期、1か月など、短期的に設定されるようになりましたが、それでも、会社が掲げる目標は大きく、期間も長かったりします。

目標が大きければ大きいほど、現状との乖離がありますから、動機付けには悪くありません。しかし、半期・四半期の大きな目標だけとなると、達成感はひとつだけです。その目標が達成できなかったら、達成感を得ることはできません。

どうするのかと言うと、目標が大きいときには、目標を小分けするのです。「スモールステップ法」と言いますが、大きな目標に対して小さな目標を数多く設定していくのです。

数多く設定すればそれを達成するたびに、ドーパミンが分泌し、よろこびを感じることができます。「できた」という経験を数多く繰り返していけば、もし、最後の目標がクリアできなかったとしても、「できた」という感覚は残り、自己効力感を得られます。

自己効力感さえ得られれば、大きな目標が達成できなくても、「次は、頑張ろう」と思える。しかし、目標がひとつで、それが達成できなければ失敗体験しか残りません。できなかった自分は、「次もできないかもしれない」と、自己効力感が下がってしまいます。挑戦的な高い目標を設定すればいいというものではなく、目標を数多く設定して、小さな成功体験を繰り返すのです。

このスモールステップ法というのは、目標設定だけでなく、自信のない人やストレス耐性の低い人へのマネジメントにも応用できます。ストレス耐性の低い人は、途中、壁にぶちあたると不安を感じやすく、そこで立ち往生してしまうことがあります。そんな人のために、目標ではなくフィードバックの回数を多くするのです。すると、心理的に持ちこたえられることができます。

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和田 隆(わだ・たかし)

ハラスメント防止コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー。メンタルプラス株式会社代表取締役、ウェルリンク株式会社シニアコンサルタント。大学卒業後、旅行会社、スポーツクラブ運営会社で主に商品企画業務に従事。その後、職場のストレスが社会問題化する流れの中、心の健康を大切にする支援をライフワークとするため、メンタルヘルスケアに取り組む。現在、カウンセラー、コンサルタントをする傍ら、ハラスメント、メンタルヘルス、睡眠改善、コミュニケーション等をテーマに、民間企業、官公庁、教育機関等で、講演・指導を行っている。受講者は10万人を超える。

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『パワハラをなくす教科書』

(和田 隆/方丈社)

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※この記事は『パワハラをなくす教科書』(和田 隆/方丈社)からの抜粋です。

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