「チラシ配って3万円」がなぜかローン地獄に・・・「高額報酬のお仕事」の危ないワナ

新型コロナウイルスに便乗するものも出てくるなど、進化し続ける「詐欺」の手口。そんな詐欺や悪徳商法に詳しいルポライター・多田文明さんの著書『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(方丈社)から、現代の詐欺から身を守る方法を抜粋してお届けします。

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「月1万円の支払い」と安心させる「割り算」型詐欺の巧妙な手法

「私たちの会社では、広告のチラシを配ってくれる方を探しています。1か月300枚を配れば3万円ほどの収入になりますが、ご興味はありますか?」

女性の声で電話がかかってきた。

少しでも収入を増やしたいと思っていた私は「ええ、月に3万円の収入はとても魅力がありますね」と答えた。

「どんなチラシなのですか?ピザ?それとも引っ越しですか?」

「通信販売のチラシです」

そこから30分ほど、チラシ配りの説明が始まる。

「私たちは通信販売の会社なのですが、最近、通信販売で物を買いましたか?」

「ええ、デジタルカメラを買いました」

「そうですか。驚くほど安くなかったですか?」

「はい」

「通信販売って、ほんと安いですよね。当社でも有名ブランドのバッグなどを扱っていますが、直接問屋さんから仕入れるので定価よりかなり安くなるんです。たとえばグッチのショルダーバックが定価9万3000円のところ、4万6000円といった感じです。たくさんのお客さんに喜ばれています」

「そうなんですか」

「私たちがあなたの住んでいる地域を調査したところ、かなりのお客さんが見込めるとの結果が出ました。そこで今回の募集になったのです!」

それにしても、今日初めて私に電話をかけてきて、すでに住んでいる場所を知っているのはちょっと気味が悪い。

すでに個人情報がもれているということだろう。

「具体的には、みなさんに毎月最低300枚のチラシを配ってもらいます」

通常、チラシ配りの相場は1枚あたり3円ほどである。

ところがこの仕事は300枚で3万円。

ちょっと待てよ。

ということは1枚あたりの単価が100円になる。

あまりにも話がおいしすぎる。

何かカラクリがありそうだ。

「配ってもらうチラシ1枚1枚には、あなたのサポート番号が入ります。それでそのチラシから注文があれば、その売り上げの10%があなたの収入になります」

ここで、不意打ちで質問をしてみた。

「チラシを配っても注文の引き合いが来なければ、お金は入ってこないということになるよね」

「いいえ、みなさん平均的に3〜5万円は収入を得ています」

「平均いくら稼げるとかそういう話じゃなくて、注文がなければお金は入らず、ゼロということだってありえるんだよね」

「ですから、みなさん最低3〜5万円の収入はありますから心配しなくても大丈夫です」

「みんながどうかではなくて、収入ゼロということもありえるんだよね」

「これまで、そうしたことはありませんから......」

私の質問をはぐらかすような答えばかりを返してくる。

受話器の向こうの女性はマニュアルの段取りどおりに話が進まない状況に、あわてている様子が言葉の端々に出ていた。

ついには、最後に話すべきことをこの段階で口にした。

「チラシ配りを始めるにあたって、月々2万円の手数料がかかります」

「ほう、2万円の手数料ですか」

これは手数料を口実にしたローンの支払いである。

ごまかしは頂点に達した。

私は彼女の言葉をさえぎり、「要はローンを組むということでしょ?」と言った。

彼女は想定していない言葉をぶつけられて、「まあ、そう言われればそうですね」と、つい本当のことを口にした。

「で、トータルいくらなの?」もう隠しきれないと判断したのか。

「2万円を2年払いで参加していただき、トータル48万円以上かかる契約になります」

もちろん私は「そんな高い契約はしません」と断った。

女性が「月々2万円の支払い」と言ってきたように、商品購入の契約をさせる時に「割り算」を使う業者もよくみかける。

「高額な商品なので買えません」と言うと、「月1万円なら、お金は出せるでしょう」と言って分割払いにすることで割安さを感じさせて、了解を取りやすくする狙いがあるのだ。

この割り算的発想こそ、現代詐欺の特徴と言えるものだ。

被害が深刻な振り込め詐欺を見ても、複数人で役割を決めて詐欺をおこなう劇場型の手口が使われる。

事前に詐欺のストーリーを作っておいて、話の展開をいくつかに分割しておき、息子役からスタートし、上司、弁護士、警察官、息子の同僚などが次々に電話に出ながら高齢者を篭絡していく。

ここでは割り算の発想で役割分担をして、多人数対個人の構図をつくり、詐欺師にとってダマしやすい有利な展開を作り上げる。

「お金をあげます」「儲かる話があります」という迷惑メールがあるが、ここにもまた、割り算の発想が潜んでいる。

このメールの誘いに乗ると出会い系サイトに誘導させられて、「お金をあげる」という人物と有料メールのやりとりを数多くさせられる。

さらに「お金を受け取る、手続きしてください」と指示しながら、手数料を払わせるなど多額の金をふんだくられる結末が待っている。

中には「遺産をあげます」などというメールもあるが、こうした迷惑メールは以前からあり、うさんくさくてほとんどの人が引っかからないと思われているのに、なぜこんなにも無駄と思われるメールを詐欺業者は数多く送り続けているのか?と思う人もいるかもしれない。

それは、その情報内容でだまされる人がわずかでもいればいいからだ。

ターゲットの1%でいいために「1%理論」とも言われる。

メールで情報を送るのはタダなので、全国の100万人に送ったとして、メールの内容に興味をもってそれを読む人が1万人いればよい。

さらに、1万人のうちにサイトへアクセスして金を払う人が1%、100人いれば十分に儲けられることになる。

ここでは、「割り算」の考えで迷惑メールをまき散らしながら、近づいてきた人をだましの網ですくっているのだ。

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114-H1-damasareta.jpg詐欺をする側の手口や心理、現状、そして「電話の切り方」など身を守る術が全7章にわたって網羅

 

多田文明(ただ・ふみあき)
1965年北海道生まれ。ルポライター。「キャッチセールス評論家」「悪徳商法評論家」「悪質商法コラムニスト」「潜入ルポライター」などとも称される。主な著書は「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)、「電話にでたらこうなった!」(ミリオン出版)など。

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『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』

(多田文明/方丈社)

「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」など、時代は変われど減らない詐欺犯罪。最新の手口や詐欺師の心理など、著者が実際にだまされてみてわかった「だましのプロ」から身を守るノウハウが詰まっています。

※この記事は『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(多田文明/方丈社)からの抜粋です。

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