運動や食事制限など「長続きしないこと」ってありますよね。でもそれは「続けること」に頑張って疲れてしまっているからかもしれません。そこで、家計簿をつけることで「ダイエットを習慣化」するメソッドが話題となった『家計簿つけたら、ヤセました!』(川下和彦/あさ出版)から、三日坊主にならない「節約しながらダイエット」の方法を連載形式でご紹介します。
気がつけば、"勝手に"ヤセていた
気がつけば、〝勝手に〟ヤセていた。
これが率直な感想だ。家計簿をつけ始めて3週間が経ったころ、歯を食いしばってダイエットプログラムに取り組むこともなく、私は5㎏以上の減量に成功していた。
では、なぜこのようなことが起きたのか?不思議に思って文献を調べてみると、それを紐解くヒントがあった。まず、メディアにも多数出演しているメンタリストのDaiGoさんの『ウィルパワーダイエット ダイエットという自分との心理戦に勝つ方法』(マガジンハウス)に書かれている一節をご一読いただきたい。
私たちの先祖は、長く飢餓と戦ってきました。食べ物は滅多に手に入らず、冬ともなれば飢えに寒さが加わり、命を落とすことも珍しくありませんでした。その結果、私たちの祖先が生き延びるために手に入れたのが、食べたものを脂肪に変えて蓄積し、飢えや寒さに備える体の仕組みです。(中略)栄養価もカロリーも豊富な食べ物がいつでも手に入る時代だというのに、私たちの体は「次はいつ食べられるかわからない」飢餓の時代を覚えていて、食べたものは脂肪として蓄えるし、できるだけ動きを抑えてせっせと蓄えた脂肪が無駄に使われないようにします。
DaiGoさんによれば、人間は生まれながらにして「脂肪を蓄えること」と「脂肪を使わないこと」に強い欲望を抱くようにできているということだ。一方で、人間が欲望を満たすためにお金を使うことは周知の事実である。
これらの特性を合わせると、人間とは飲んだり食べたりして「脂肪を蓄えること」や、なるべく動かずに楽して「脂肪を使わないこと」に対して、お金を使う動物だということになる。
だから、過去の私も欲望の赴くままに飲食や移動にお金を使って、ビンボーなデブになっていたわけだ。しかし、ここでもし、なるべくムダなお金を使わない習慣が身についていたらどうなるだろうか。「お金を使わないこと」と、「『脂肪を蓄えること」や『脂肪を使わないこと」』とは、トレードオフの関係である。
トレードオフとは、ご存知の通り「一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ない状態」のことだが、もっと平たく言えば、「あちらを立てれば、こちらが立たず」ということである。
たとえば、あなたが飲食店の店長で、お店をつくろうとしていると仮定する。お店をつくるときに客席数を多くすれば、一度に多くのお客様に入ってもらうことができる。しかし、お客様が多くなる分、一人ひとりへのサービスが手薄になる。逆に、客席数を少なくすれば、一人ひとりへのサービスを手厚くすることができるが、その分一度に多くのお客様に対応することができなくなってしまう。これがトレードオフの状態である。
話をお金と脂肪の関係に戻すと、脂肪を蓄えるためには飲食費がかかるし、脂肪を使わないためには、バスやタクシーに乗るための交通費がかかる。
しかし、いったん節約ゲームにハマりだすと、「お金を使いたくない」という欲望が「たくさん食べたい」「動かずに楽したい」という欲望に勝り、たくさん食べることを抑制し、動くことを促進するようになるので、結果的に脂肪が燃やされ、贅肉が減っていくことになるのだ。
ところが、私が最初からダイエットに取り組んでいたら、過去に何度も失敗をくり返していたように、「食べたい!」「飲みたい!」という欲望と「楽したい!」という欲望に負けて、あえなく撃沈していただろう。
家計簿アプリを使って「ムダ遣いしたくない!」という欲望を育てていたからこそ、私はほぼ無意識のうちに、飲食欲求や楽したい欲求に勝つことができたのである。
このことを図で表わすと以下になる。ご覧の通り、お金を使わないようにして貯金を増やすと、贅肉が減っていく。
つまり、「貯まる」と「ヤセる」は、比例の関係になっているのだ。私はこのグラフに沿うようにして、お金を貯めながら贅肉を落とすことができたのである。
貯まる→ヤセる→モテる
また、私は貯金とダイエットが相関しているように、ダイエットとモテる体づくりが、相関しているということも学んだ。
贅肉が落ちてくると、かつて平日は仕事と飲み会で体力を使い果たし、土日もトドのように寝て過ごしていた私が、自分でも信じられないことに体を動かしたくて仕方がなくなっていったのである。
最初は3日~4日に1回のペースで筋トレを始め、徐々に2日に1回、鍛える部位を変えて毎日トレーニングに取り組むようになっていった。
それから1年以上が過ぎ、この本を書いている今でも毎日欠かさずに筋トレを続けている。その結果、体型に合わせて着られる服が増え、清潔感も増した。そして、やり遂げることができた自分に自信を持てるようになり、男女を問わず、周囲からの見る目や評判が変わる(=モテる)のを実感し、大きく人生が変わった。
しかし、もし私が「スマホで家計簿をつける」ではなく、「食事を制限する」「ジムでトレーニングに励む」などの習慣からスタートしていたら、確実にこの結果を得ることはできていなかっただろう。
このように、「貯める」は「ヤセる」に、「ヤセる」は「モテる」につながっているのである。
イラスト/高田真弓
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1部で著者に起こった変化、2部でそのメソッドが解説。実際に使ったという家計簿アプリも紹介されています