私たちが判決を下すこともある「裁判員制度」の開始から2019年5月で10年となります。制度の現状と課題、そしてもし選ばれたら念頭に置いておくべきことについて、埼玉弁護士会・裁判員制度問題検討特別委員会に聞きました。
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「黒に近いグレーも白」刑事裁判の原則を念頭に
裁判員裁判では、調査票や質問票に相応の辞退理由を記載し返送すれば、かなり幅広い範囲で辞退が認められているのが現状です。調査票と質問票の返送時に辞退が認められる人の割合は年々上昇傾向です。それでも、裁判員として選ばれることがあるかもしれません。その場合、どのような点に注意して参加すればよいのでしょうか。
菊地弁護士は、「従来は検察側が証明しようとしているストーリーの矛盾点、誤りを弁護側が追及すれば良かったのですが、いまでは検察側、弁護側双方が裁判の冒頭で、これから証明しようとするストーリーを主張するようになりました」と言います。「これでは、検察の主張が正しいかどうかではなく、検察側と弁護側のどちらのストーリーがより正しそうに聞こえるか、という誤った判断を裁判員の方々に迫ることになりかねません」と立石弁護士も続けます。
「刑事裁判の原則は、無罪推定。『疑わしきは被告人の利益に』ということ。つまり、日常生活ではグレーは黒だと思いがちですが、刑事裁判ではグレーは白なのです。もし裁判員裁判に参加することになった場合、この違いだけは頭の片隅に置いていただきたい」(小出弁護士)
新聞やニュースを見れば、事件の報道であふれ返っています。情報をシャットアウトし、フラットな気持ちで被告人を見つめるのは難しいかもしれません。しかし、この刑事裁判の原則だけは守って参加したいですね。
■裁判員が選ばれる流れ
※裁判員制度HP「裁判員の選ばれ方」より作成
取材・文/仁井慎治