【おかえりモネ】『ゲゲゲ』布美枝も? 周りの人たちを変えていく「媒介主人公」のあり方/21週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』に見る『媒介主人公』のあり方」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】ずっと味方ではなかった...幼馴染への甘えや幻想を打ち砕いた亮のキツイ一言/20週目

【最初から読む】『おかえりモネ』は異例のスタート? 朝ドラの"重要な2週間"に思うこと/1~2週目

【おかえりモネ】『ゲゲゲ』布美枝も? 周りの人たちを変えていく「媒介主人公」のあり方/21週目 メイン.jpg

清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第21週のサブタイトルは「胸に秘めた想い」。

異色だらけの朝ドラと言われる本作の一つのポイントに、「主人公の成長物語ではなく、主人公を媒介として周りの人たちが変わっていくこと」が挙げられる。

その変化は、ときに様々な痛みを伴うものでもある。

今週もまた、永浦百音(清原)は先週の亮(永瀬廉)に続いて、「きれいごと」という厳しい言葉を浴びせられる。

しかも、今度は初対面の中学生・あかり(伊東蒼)に......。

民宿を再開したいという亜哉子(鈴木京香)、本店で営業部長になる耕治(内野聖陽)、東京の大学に誘われて悩む未知(蒔田彩珠)、牡蠣棚を自分の代で終わりにすると耕治に言う龍己(藤竜也)など、百音が故郷に戻ってから、永浦家皆、様々な変化に揺れていた。

そんな中、コミュニティFMにやってきた中学生・あかりに気象予報士になった理由を問われ、人の役に立ちたいからと答えた百音がぶつけられたのが、冒頭の言葉だ。

それぞれが家族のために自分の役割を考え、自分の気持ちにフタをして生きているものの、未知は「研究」、元教師の亜哉子は「子どもに関わる仕事をすること」と本当はやりたいことがある。

それは自分自身が選んだ道だが、未知は自分のやりたいことを見つけて仕事にして、故郷に戻って好きな人ともうまくいっている百音に対し、「最高だよね、全部順調じゃん。全部持ってんじゃん。私の気持ちなんか、わかるわけない」と自分の苦悩をぶつける。

また、あかりはかつての亜哉子の元教え子だったことから、百音が永浦家に連れて行く。

そしてその夜、亜哉子は百音の前で教師を辞めた本当の理由――東日本大震災発生時に、「長い夜で、一瞬、10分くらい」自分の子どもたちのことを考えてしまい、目の前の子どもたちを置いて行こうとしていたと打ち明けるのだ。

教師である前に、一人の母でもある亜哉子を責めることなど誰ができるだろうか。

しかし、亜哉子自身はその10分のことがずっと頭から離れず、自分を責め続けていた。

ところで、長い朝ドラの歴史において、これまでも作り手たちが明言している「媒介となる主人公」はもう一人いた。

『ゲゲゲの女房』の布美枝(松下奈緒)だ。

布美枝の場合、夫の情熱を照らし、貧乏暮らしの中のささやかな幸せを照らす、穏やかな光のようだった。

一方、本作の百音は、それぞれが目を反らしてきた心の中に抱える傷を直視させ、痛みを伴いつつも、毒を出し、再生に向かわせる存在である。

だからこそ、その過程で様々な人の厳しい言葉を浴びることも多い。

と同時に、「自分の好きなことをして、うまくいっているように見える人」が受け止めてきたものの大きさも感じてしまう。

『ゲゲゲの女房』と『おかえりモネ』、異なる作風の2作の異なる「媒介主人公」のあり方を見比べてみるのも面白いのではないか。

文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

PAGE TOP