毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』で描かれる異性の幼馴染」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。
【前回】月曜のプロポーズは「失敗フラグ」!? "朝ドラあるある"を逆手に描く本作の妙/19週目
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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第20週のサブタイトルは「気象予報士に何ができる?」。
ウェザーエキスパーツの地方営業所スタッフとして気仙沼に戻った百音(清原)は、市役所に勤める悠人(高田彪我)の協力により、コミュニティFMで気象情報を伝えることになる。
幼馴染たちの中で最も穏やかで、いつもにこやかにみんなを見守っていた印象の悠人が、故郷に戻った百音を支えてくれる展開は、朝ドラの王道かつ伝統的「異性の幼馴染」像の一つでもある。
その一方で、意外だったのは亮(永瀬廉)の反応だ。
亮は百音に「モネはさ、なんで帰ってきたの?」と聞き、百音がどうしても気仙沼に戻ってきたかったこと、地元のために働きたかったことを話すと、薄ら笑いと共にキツイ一言を投げかける。
「ごめん、綺麗ごとにしか聞こえないわ」
亮にずっと片想いしてきた妹・未知(蒔田彩珠)の前で言われることも、寝ていたはずの三生(前田航基)と悠人が聞いていたことも、なかなかしんどい。
本人は「嫉妬して当たってるとか思われたら、カッコ悪いな」と謝るが、「結婚もぼちぼちする感じだったんでしょ。あの、俺も前に会ったあの人と」とわざわざ口にするあたり、百音にフラれたことへの引っかかりは今もあるだろう。
加えて、地元で漁業に打ち込んできた亮が、東京で仕事も恋愛も順当にしてきた百音に「なぜ今さら?」と思うのも当然だ。
しかし、本来、生き方は誰でも自分で選んで良いはずだし、百音が悪いわけではない。
「地元に残る」「地元を出る」「地元に戻る」という選択の違いにより、古くからの友人と距離を感じることは意外とあるもの。
同様に、結婚や出産をする・しないなどの違いでも、友人が別世界に行ってしまったように感じることは特に20代~30代ではある。
そこからさらに年齢を重ねると、そうした差異が些末なことに思え、わだかまりがなくなることも多いが、20代半ばくらいは「引き返せない別の道」に感じてしまうかもしれない。
『花子とアン』の朝市を筆頭に、朝ドラでの異性の幼馴染はずっと思ってくれ、味方でいてくれるパターンが多く、その献身的な無償の報われない愛に萌えつつ、当たり前のように受け止めてきた視聴者もたくさんいるだろう。
亮のキツイ一言は、そうした異性の幼馴染への甘えや幻想を打ち砕き、一種の「幼馴染の呪い」を壊すリアルだ。
それにしても、身近な人の負の感情を引き出すことが多く、それでいて、強く言い返すことも泣くこともない百音の抱え込み体質は不安になるほど。
そこをすっかり丸くなった大人の菅波(坂口健太郎)がおおらかに受け止める流れも、実によくできている。
文/田幸和歌子