【ちむどんどん】ドタバタ展開のラスト1週。初めから「決まっていた」最終回で本当に伝えたかったこと

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「初めから決まっていた最終回」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】暢子様がやんばるへ...涙の送別会で全員が忘れていた「2つのこと」

 【ちむどんどん】ドタバタ展開のラスト1週。初めから「決まっていた」最終回で本当に伝えたかったこと pixta_75700787_S.jpg

本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』最終週となる第25週。

多くの視聴者が「最終週」そして「最終回」を特別な思いで見守った。

「#ちむどんどん反省会」のネタにするためではない(もちろんそういう人も多数いるだろうが)。

制作統括の小林大児チーフプロデューサーが「MANTANWEB」4月10日のインタビューで「脚本家チームとしては、"最終回がこうなる"ということを初めに決めてから、第1週の本を作るという新しい挑戦をしました」と語っていたためだ。

はたして最終回からの「逆算」で描きたかったことは何なのか。

暢子(黒島結菜)たち一家がやんばるに移住してから1年。

フォンターナのオーナー・房子(原田美枝子)がやんばるを訪れる。

暢子は再会を喜ぶが、房子には優子(仲間由紀恵)に大里五郎(草刈正雄)を引き合わせるという目的があった。

娘(草刈麻有)と共に比嘉家にやって来た五郎は、優子の姉・時恵が大切にしていた「ジーファー」(沖縄のかんざし)を渡す。

五郎は沖縄戦の最中に時恵を看取ったと告白。

時恵が優子と弟を見捨てたわけではなく、必死で探したが見つからなかったと語っていたこと、ジーファーを優子にと託されたことを伝える。

そして、時恵が最後に望んだ水を、自分たちの明日からを考えて「ない」と嘘をつき、あげなかったことを謝罪する。

この突然のシリアス展開は、第1~2週で沖縄上空を米軍機が行き来し、辛い過去を抱えつつも、それを子どもたちには見せないよう、努めて明るく振る舞っていた優子の姿と重なる。

そして、沖縄のお盆の「ウークイ」に優子が遺骨収集現場に出かけていたこととも。

おそらく1~2週とお盆、最終週のこの展開こそが本作の伝えたかったメッセージなのだろう。

と思ったら、そこから再びドタバタ展開へ。

暢子の新しい店「やんばるちむどんどん」開店前日、予定していた「カラキ麺」100食分が納品されないというトラブルが勃発、暢子は家族や村の人たちの力を借りて麺を完成させ、なんとかオープンへ。

そこには、開店日を間違えた賢秀(竜星涼)の姿はなかったが、ハワイで成功した金吾(渡辺大知)や3児の母となった早苗(高田夏帆)、ブラジルから里帰りした正男(秋元龍太朗)といった懐かしい顔ぶれが集う。

ところが、体調に異変が起きていた歌子(上白石萌歌)が高熱で倒れてしまう。

脚本家・羽原大介氏は『若草物語』を参考にしたと語っているが、まさかラスト2日まで来て『若草物語第二部』(しょう紅熱で亡くなった展開は映画や一部児童書の設定で、原作上は一命をとりとめたものの、第二部で死去)のベスの死の展開を描くのか......と多くの人が思ったことだろう。

しかし、タクシーの無賃乗車でやって来た賢秀と、暢子、良子(川口春奈)は海に行き、「お父ちゃーん」と叫んで歌子の無事を祈り、そこから時代は一気に「202×年」(令和X年)へ。

「北斗の拳」的な年表記もユニークだが、そこに登場したツヤツヤ・ピチピチお肌&白髪・白眉の暢子たち兄妹の姿はほぼコント。

そして、彼らの子ども時代を演じていた子役たちが孫として登場。

謎の難病を抱えていた歌子は「この10年風邪もひいてない」健康体になっており、まだご健在の優子の誕生日を一家で祝い、若いうちに亡くなった父・賢三(大森南朋)の魂も一緒に祝うという展開に。

記念撮影と共にナレーションで語られたのは、賢秀が養豚業を地道に続けて家族への借金を全て倍返ししたこと、良子夫妻が校長になり、銀婚式で夢の海外旅行に行ったこと、歌子は歌手活動&智(前田公輝)はそれを支え、和彦(宮沢氷魚)は沖縄の本を書いて沖縄文化を伝え続けたこと、暢子の店は大繁盛したこと。

そして、クランクアップで暢子が制服姿だった謎については「夢オチ」も予想されていたが、これは単に回想シーンのためだったことが発覚。

最終回を決めてから作ったなら、そこも序盤でまとめて撮影しておけた気もするが......。

改めて本作が最終回で最も伝えたかったことは何だろうか。

ドローンによる撮影技術の向上か、セットでは出せない沖縄の太陽の力強さや青い海か。

それとも、視聴者一人一人が作品と真剣に向き合い続け、その真意を日々考え続けることの重要性か。

SNSには半年間伴走し続けた自分自身への労いの声が続出するという、なんとも新しい展開が見られた。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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