「みんなに喜んでもらうことが生きがいです」
ヒデさんは、インターネットテレビ局・天草テレビの女子アナウンサー。仕事が休みの日に、天草市の社会福祉協議会の施設でお会いしました。〝住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくり〟をモットーに運営されるこの場所に、ヒデさんは20年近く旦那さまと通っているのです。
一目見て、まずその若々しさに驚かされました。肌はつやつや、背筋はピンとして、誰より動く...。少しも座って体を休めようとしません。
その次に驚かされたのは、初対面の私たちスタッフのためにごはんをこしらえていてくださったこと。「話は後。おなかを満たして」というように、施設の台所で前の日から仕込んでいた炊き込みご飯や、天草の郷土メニュー・だご汁(団子汁)、お煮しめをテーブルいっぱいに並べてもてなしてくれたのです。
聞けば、大勢の食事を作るのはお手のもの。施設の行事があるたびに、時には100人分ものお昼ごはんを用意するのだそうです。
毎日することは他にもあります。
「朝9時から施設が閉館する15時まで、何するかというとね、歌や日舞(笑)。楽しくて」とはにかむしぐさのチャーミングなこと...。
そんな日常がかなわなかった時期もあります。2017年には病に倒れ、アナウンサーとしての仕事も、施設に通うことさえも休止せざるを得なくなりましたが、その時の思いは秘して語りません。ただ笑顔で、再スタートを切ったこと、いま心新たにいることを伝えてくれました。
天草の名所・天草四郎(「島原の乱」の総指揮者として語り継がれる)ミュージアムにも案内してくれたヒデさん。青空の下、胸を張ってマイクを持つ凛とした姿が忘れられません。
何でもない、普段の日を大切に
ふるまってくれた飯台いっぱいの炊き込みご飯とだご汁、お煮しめ。だご汁は天草で食べ継がれる郷土料理。水で溶いた小麦粉を団子状にして具材と煮込む。食べ切れなかったご飯はおにぎりにして持たせてくれました。惜しみなくもてなすのが、ヒデさんの喜びです。
歌う、踊る
大勢が集まれる畳敷きの部屋で、舞台に上がり、大好きな中村美律子の新曲「弥太郎鴉がらす」を熱唱してくれたヒデさん。「70の手習いよ」と得意の日舞も。割り箸を扇子代わりに、祝賀の舞を披露してくれました。これも元気の秘けつです。
天草テレビとは?
天草の文化と魅力を発信するインターネット放送局。会員登録しておけば、インターネットをつなぐだけでいつでもどこでも好きな番組を視聴できる。はるのさんが出演する新番組『はるのちゃんが行く世界遺産キリシタンの里』も好評放映中。高齢女子アナウンサーの活躍に、海外からの取材も多数。
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取材・文/飯田充代 写真/小田崎智裕 協力/天草テレビ