渡米以来、音楽活動の傍ら「ソロめし」の腕を磨いてきた大江千里さん。冷蔵庫にある食材で、毎回「これが最後のメシ」と思えるひと皿を、心を込めて丁寧に作る―。そして最高のお客様である「自分」をおもてなしするそうです。本書のレシピにはサイド・ミュージックが選曲されているため、料理を作りながら思わず踊りたくなってしまうかも?『ブルックリンでソロめし! 美味しい!カンタン!驚き!の大江屋レシピから46皿のラブ&ピース』より、選りすぐりのレシピ&エッセイをご紹介します。
※本記事は大江千里著の書籍『ブルックリンでソロめし! 美味しい!カンタン!驚き!の大江屋レシピから46皿のラブ&ピース』から一部抜粋・編集しました。
【前回】フライパンで1つでアップルタルト!? 簡単焼き上がりの秘密は?
欲しいなと思ったら家の中に「風の道」を
自分の中の物欲がムクムクと膨らむときがある。
そういうときはうちにいて窓を開ける。
風がそっと部屋に入ってくる。
アパートのドアを開けっぱなしにする。
すると「風の道」が家の中にできる。
風がやってきて去っていく道。
棚がもう一つ欲しいな、足をのっけるオットマンが欲しいな、半袖のシャツが欲しいな、電子レンジがあったら便利だろうな、そんな、ものが欲しいな、という気持ちが起こると、きっとその中のいくつかは本気なんだろうけれど、とりあえず、まずは家の中に「風の道」を作る。
風は僕の横を静かにすっと通り過ぎていく。
物欲があるときは心はそわそわしていて、あれをやったりこれをやったり落ち着かない。
まあ、一服やれや(タバコは吸わないけれど)。
ただぼんやりメールも見ないで、音楽だってかけないで、あくびをして、体を伸ばして、のんびり何もしない。