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高速道路の渋滞原因の一つが料金支払いである。現金を手渡しで支払うシステムでは、混雑時の渋滞は避けられない。そこで登場したのが、料金自動支払いシステムETC(Electronic Toll Collection System)である。
ETCは車両に設置された装置と料金所のアンテナとが無線通信し、車両を止めることなく料金の支払いをすますシステム。料金所渋滞が緩和され、ドライブは快適になった。また、渋滞にともなう大気汚染や騒音が低減するという効果も得られている。
ETCシステムを利用するには、二つの準備が必要となる。ETCカードとそのカードを読み取る車載器である。ETCカードにはICが内蔵され、課金情報、クレジットカード情報などが書き込まれている。自動車がゲートを通過すると、車載器とゲートが情報をやり取りし、ETCカードのデータを更新する。情報はシステムセンターにも送られ、契約したクレジット会社に通知される。
このしくみからわかるように、カードさえあれば、自分の車でなくとも利用できる。レンタカーや他人から借りた自動車に車載器がセットされていれば、カードを差し込むだけでシステムを利用できるのだ。
道路と車が対話するという意味では、ETC同様よく利用されているシステムにVICSがある。これは道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System)の略称である。渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビなどに文字・図形で表示する。VICSの情報はビーコンと呼ばれる発信施設の電波や光から、またはFM放送から車に伝えられる。
ETCやVICSをさらに発展させたさまざまなシステムが考えられている。例えば、国土交通省などが推進するITS(Intelligent Transport Systems)は人と道路と車両とのネットワークを作り、さまざまな道路交通問題を解決しようとするのが目的である。
涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)
1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。