定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師で作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「90歳の壁を元気に乗り越える5つの極意」です。
健康づくりの基本は「筋活・骨活」
ぼくの健康法の目指すところは、90歳になっても一人でレストランに行って好きなものを食べ、日帰り温泉に行けるようにすることです。それを実現するには、しっかりと筋肉を保つことが大切です。この連載で何度も書いてきましたので、読者の方はもうおわかりですね。
日々のウォーキングや筋トレ、そして、タンパク質たっぷりの食生活が重要ということです。
でも、筋肉だけでは不十分です。年をとると骨も弱くなります。高齢になってから骨折すると、そのまま寝たきりになることも珍しくありません。90歳を超えてピンピン元気に生きたい人はまず「筋活・骨活」をこころがけてください。具体的な筋トレ・骨トレの方法は後述します。
「腸活」すると「眠活」になる
次に大切なのが「腸活」です。腸は、免疫機能の中枢なので、腸を健康に保つことは、がんの予防やコロナなどの感染症の重症化を防ぐうえでとても大切です。
そのためには、腸内細菌の善玉菌を増やすこと。納豆、みそ、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品や、食物繊維をとるようにしましょう。
また、腸は睡眠と密接に関係しています。幸せホルモンといわれるセロトニンは脳でも分泌されますが、多くは腸で分泌されます。セロトニンは夜になると、睡眠をうながすメラトニンに変わるので、日中、太陽の光を浴びたり、リズミカルな運動などをしてセロトニンをたっぷり出してやると、夜寝つきやすくなるのです。つまり、日中の「筋活」が「腸活」になり、夜の「眠活」になるというわけです。
「眠活」して、認知症予防の「脳活」を成功させよう
いい睡眠は、健康生活に欠かすことができません。睡眠が不十分だと、うつ病、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、がんなどの病気になりやすくなり、健康に悪い影響を与えます。
睡眠と認知症とのかかわりも指摘されており、睡眠時間が6時間以下になると、認知症のリスクが高くなります。また、意外かもしれませんが、睡眠時間が9時間以上と長い場合も、認知症リスクが上がることがわかってきました。
脳の健康を保つためには、「脳活」をしっかりやる必要があります。脳活というと、計算したり、ドリルを解いたりというイメージがあるかもしれません。それも脳活になりますが、ぐっすり眠ること、つまり「眠活」が「脳活」になることも覚えておいてください。
年をとるとぐっすり眠れないという人が多くなりますが、日中、体を動かして適度に体を疲れさせると眠りやすくなります。ぬるめのお風呂にゆっくり入って、副交感神経を優位にすることもスムーズな入眠のコツです。
このような工夫でいい睡眠が得られれば、体と脳はしっかり休息でき、記憶も整理できます。それだけでなく、脳脊髄液がアルツハイマー病の原因の一つアミロイドβ(ベータ)を排出し、認知症リスクを減らしてくれるのです。
また、いい睡眠をとると、前半の深い眠りのときに、成長ホルモンが分泌され、体中の細胞を修復します。ぐっすり眠れた翌日、肌の状態がいいのは、成長ホルモンのおかげなのです。
「脈活」とは、血管の若さを保つこと
90歳の壁を元気に越えるには、血管を老化させないこともポイントです。高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、これらはみんな血管の老化によっておこります。人は血管から老いるというのは、このためです。
血管を若々しく保つことを、「脈活」と名付けました。高血圧や血管の内側が狭くなる動脈硬化がすすみ、脳梗塞になると高齢期の生活の質を下げてしまいます。毛細血管で老化がおこれば、シミやシワ、冷え、むくみなどの原因になります。
「脈活」をするには、いい睡眠ができるように「眠活」することと、筋肉を動かす「筋活」の二つが大事です。
こうして考えると、「筋活・骨活」「腸活」「脳活」「眠活」「脈活」の5つは、互いに関係しあっています。新刊『鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)では、この5つの「活」について詳しく紹介しています。
人生を最後までピンピン元気にまっとうするためにも、5つの活でバランスよく、健康をバージョンアップしていきましょう。