雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回は、認知症予防として鎌田さんがおすすめしている「ワーキングメモリを鍛える」について教えていただきました。
前回の記事:医師・鎌田實さんが教える「認知症を予防する3つの生活習慣」
ワーキングメモリを鍛える
認知症予防としてもう一つおすすめしたいのが、ワーキングメモリを鍛えることです。
ワーキングメモリとは短期記憶ともいわれ、何らかの作業を遂行するときに必要な手順やルールを記憶しておく機能のことです。
料理は、ワーキングメモリのかたまりといわれています。
食材を洗う、切る、加熱するなどさまざまな工程を順序よく行うには、ワーキングメモリが不可欠です。
じゃがいもの皮をむいたのに、それを忘れてまたむき出したらアブナイ。
脳の活性化のためにも、ぜひ、料理をやってみましょう。
毎日やっているという人は、新しい料理に挑戦してみると脳の活性化につながります。
挑戦することも、脳にいい刺激を与えます。
新しい趣味を始めたり、ファッションをイメージチェンジしたり。
散歩コースを変えることも挑戦の一つです。
ぼくは、ワーキングメモリを鍛えるために次の4つのことを実践しています。
1、新聞を読んで、印象に残った単語を4つ思い出すようにしています。
一日のうちに何度もその単語を思い出すようにすると、数日経っても記憶に残っています。
2、カラオケで歌うときには、歌詞を見ず歌えるようにしています。
鎌田は歌詞を覚えるのが苦手です。
新曲に挑戦すると、脳はもっと活性化します。
3、その日の楽しかったことを思い出すようにします。
「〇〇がおいしかった」「△△さんと会った」とか些細なことでいいのです。
楽しいことや感動、喜びは脳にとっていい刺激になり、ものごとに対して建設的になれます。
4、電車に乗ったときには、できるだけ中吊りの広告を見て、5分後に思い出すように自主トレをしています。
いくつになっても脳は成長する
ワーキングメモリを司っている脳の前頭前野は、応用力や判断力、アイデア、感情のコントロールなどの働きもしています。
ぼくは冒頭のような物忘れこそ増えてきましたが、自主トレをしていることで、応用力や判断力、アイデア力は若い時よりもむしろ今のほうが高まっているように感じています。
数年前、若い仲間と地域包括ケア研究所を立ち上げ、まちだ丘の上病院(東京都町田市)の経営も始めました。
その病院を中心に、認知症カフェや子ども食堂など、地域を巻き込んだメディカルビレッジの構想のアイデアが次々とわき、とてもワクワクしています。
ワーキングメモリを鍛えるための習慣が功を奏し、アイデア力を高めてくれたのかもしれません。
人間はいくつになっても成長できるのだと思うとうれしくなります。
まちだ丘の上病院で回診をしています。
同病院では健康勉強会も開いています。
こうした脳との付き合い方や、認知症予防のための生活習慣を、『認知症にならない29の習慣』(朝日出版社)という一冊にまとめました。
科学的なデータと、内科医のぼくが実践していることをわかりやすく紹介しています。
毎日できることばかりなので、新刊を読んで、新しい生活習慣を始めていただければうれしいです。