もうすぐ2020年。新しい年を迎えると、何か新しいことを始めたくなりますよね? そこでおすすめしたいのが、大人ならではの「一人旅」。好きなときに、行きたい場所へ、食べたいものを、一人で楽しむ。逆に言えば、とにかく「やりたくないことはやらなくていいという究極の自由さが魅力」だと人気旅行作家・吉田友和さんは言います。そこで、吉田さんの著書『泣かない一人旅』(ワニブックス)から、初めてでもできる「一人旅の楽しみ方とコツ」のエッセンスを連載形式でお届け。2020年は一人で大人の旅に出てみませんか?
カップルが多い場所は避ける
一人旅を楽しむために、具体的にどうすればいいかを紹介する。極意などというと大げさだが、実体験を元に筆者の考えをまとめられればと思っている。
とはいえ、そもそも一人旅だからといって何か特別なことをするわけではない。遠いところへ行って、珍しいものを観て、美味しいものを食べて帰ってくる。ときには温泉に浸かったり、お土産を買い込んだりもする。旅は娯楽であり、休日を満喫する手段の一つであることは、一人だろうが複数人だろうが変わりないのだ。
などという前提を踏まえたうえで、あえて一人旅ならではの注意点を挙げると、行き先を選ぶ際には自分が一人であることを意識した方が失敗が少ない。一人でも行けるが、どちらかといえば友人や恋人、家族と行った方が楽しめるところは存在するからだ。
僕は写真を撮るのが趣味で、巷で絶景と称賛されるような場所へしばしば足を運んでいる。見晴らしのいい展望台や、海や山に囲まれた景勝地などがとくにお気に入りだ。ところが、そういう場所をあちこち巡っているうちに、意外な共通点に気がついた。
場所によっては、妙にカップルの姿が多いのだ。最初はなぜだろうかと不思議に思ったが、あるとき「恋人の聖地」と書かれた立て看板を目にして腑に落ちた。
恋人の聖地──ご存じだろうか?
日本全国の観光地の中から、「プロポーズにふさわしいロマンチックなスポット」を認定したものだという。
プロジェクトを主催しているのは地域活性化支援センターというNPO法人で、観光庁やJTBなども後援している。集客力の強化や、地域の活性化を目的としているというから、要するに町興しの一種と理解すればいいだろう。
どういった場所が恋人の聖地に認定されているかは、公式サイトにリストが出ている。これは考え方によっては、一人旅に最適ではない観光地のリストと捉えることもできる。周りが幸せそうなカップルばかりの中、一人でいると場違いな気にもなる。
こういう場所に限って、一人で写真を撮っているとよく声をかけられる。
「すみません、シャッター押してもらえませんか?」
大きなカメラを首からぶら下げているせいもあるだろう。もちろん、快く応じて、頼まれもしないのに縦位置と横位置の最低二パターンは撮ってあげる。お役に立てて光栄と思う一方で、少なからず寂しさを覚えるのも正直なところだ。
孤独ではなく単独の旅行者
誤解されたら困るので補足しておくが、別に恋人の聖地そのものに異を唱えたいわけではない。聖地の存在が旅の動機に繋がるのなら、それは素晴らしいことだと思う。紹介したのは単にわかりやすい事例だったからだ。
「カップルばかりいる場所へあえて一人で行かなくても......」
ここで伝えたいのは、ひとまずそういう話である。
リストを眺めてみると、聖地に認定されているのは旅先として魅力的なところばかりだ。実際には一人でも普通に楽しめるだろうし、かくいう僕自身は一人でも行きたいと思えるようなスポットも多い。事実、訪問した場所がたまたま聖地だったことで、その存在を知ったぐらいだ。
ただ、他人は他人と割り切れる人は、気にせず訪れたって全然問題ない。というより、行きたいところがあるのなら、行くべきだろう。
そもそも、「一人旅は寂しいもの」という考え自体、偏見も多分に含まれている。みんながそう思い込んでいると言ってもいい。「一人旅は気楽でいい」と発想を転換してみるのだ。実際にやってみると、寂しさよりも開放感の方が遥かに大きい。
寂しさを感じるのは、一人旅を「孤独」なものと認識しているからだ。孤独という言葉には少なからず哀愁が漂う。ならば、別の言葉に置き換えてみたらどうだろうか。
たとえば、「単独」と書いてみる。すると、不思議なことに途端に雰囲気が変わってくる。なんだかこだわりのようなものが感じられるのは僕だけだろうか。
登山の世界では「単独行」、ゴルフのランキングでは「単独首位」などと言ったりもする。どちらかといえばポジティブな意味合いで使われている言葉である。
あるいは「ソロ」と横文字にしてみるのもアリだ。昨今は、「ソリスト」などとも言うようになった。本来は音楽の独奏者などを表すものだが、一人で物事を行う人たちのことをそう呼ぶ。一人旅に当てはめてもいいだろう。
同じく現代語としては「ぼっち」という言い方もよく聞く。自虐的な意味合いで使われるが、「ひとりぼっち」から来ているわけだから、どうしても寂しさが感じられる。ニュアンスとしては孤独に近く、ソリストの方が前向きな印象を受ける。
ともあれ、言葉を変えただけで一人旅のイメージが違ったものになる。結局は、旅する者の気持ち次第なのだろう。
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旅の心得や楽しみ方、交通手段や宿の探し方まで、全10章で一人旅に必要な全てを解説。一人旅でなくても、プロが旅立つ前にする下準備は、とても参考になります