もうすぐ2020年。新しい年を迎えると、何か新しいことを始めたくなりますよね? そこでおすすめしたいのが、大人ならではの「一人旅」。好きなときに、行きたい場所へ、食べたいものを、一人で楽しむ。逆に言えば、とにかく「やりたくないことはやらなくていいという究極の自由さが魅力」だと人気旅行作家・吉田友和さんは言います。そこで、吉田さんの著書『泣かない一人旅』(ワニブックス)から、初めてでもできる「一人旅の楽しみ方とコツ」のエッセンスを連載形式でお届け。2020年は一人で大人の旅に出てみませんか?
一人旅のメリットとデメリット
旅の本やガイドブックなどを読むと、どこへ行くかや、何をしに行くか、といった点ばかりが語られている。それらはもちろん大きな関心事だが、加えて誰と行くかも問題だと思う。場合によっては最重要事項にもなり得るほどだ。
筆者のケースでは、最近は家族で旅することが一番多い。子どもが生まれる前は夫婦二人でよく旅していたし、さらには友人どうしで旅をしたこともある。それら同行者がいる旅と比べると、「一人旅」はやはり違った種類の旅といえる。
そこでまずは一人旅のメリットについて整理してみたい。
・行きたいところに行ける
・やりたくないことは一切しなくていい
・予算を自分で設定できる
・人と話さなくていい
・料理の注文で冒険できる
沢山ありそうなので、とりあえず大きなもの五つに絞ってみた。こうして書き出してみると、方向性は一貫していることがわかる。要するに、一人の方が好き勝手に旅できるということだ。どこか現実逃避にも近い。本書冒頭の「プロローグ」でも書いたが、その魅力を一言であらわすなら、「究極の自由」という表現が最もしっくりくる。
一方で、一人旅のデメリットとしてはどんなものが考えられるだろうか。
・誰も案内してくれない
・すべて一人で手配しなければならない
・旅費が割高になる
・話し相手がいない
・料理やお酒のシェアができない
同様に五つ挙げてみたが、前述したメリットがそのままデメリットにもなっている。なるほど、捉え方次第というわけだ。
実務的な部分では一人の方が不利な点が多いのだともいえる。手助けしてくれる人がいるぶん、同行者がいる旅の方が快適である。得られる自由と引き換えに、面倒事もすべて自分一人で処理しなければならない。
どちらがいい悪いという話ではない。趣味や探究心を追求したいなら一人の方が都合がいいし、一人で行くには寂しい場所なら道連れがほしい。旅の目的や気分に合わせて、その都度最適なスタイルを選びたいところだ。
旅の思い出を共有できる非一人旅
仮にこれが海外旅行であれば、一人旅にはさらなるデメリットが出てくる。国によっては危険なところもあったりするからだ。トラブルに遭う確率は一人旅の方が高い。でも、国内旅行であればこの点はさほど意識する必要はないだろう。日本は安全な国なのだ。
さらにはもうひとつ、メリットにもデメリットにもなり得る一人旅の大きな特徴がある。それは、「旅の思い出を誰かと共有できない」ということ。
美しい風景に見惚れたり、絶品のご当地グルメにほっぺたが落ちそうになったりしたとき、同行者がいればその感動を共に語り合うことができる。
「あのときのあれはすごかったね」と、旅から帰ってきた後も同じ経験を振り返って懐かしむことができる。
この、旅の思い出を誰かと共有できるという点こそが、同行者のいる旅、すなわち非一人旅の最大の魅力ではないかと僕は思っている。
「だったら、SNSで情報発信すればいいのでは?」という意見もあるかもしれない。一人であっても、旅をしながら写真や動画をアップして、友人・知人に伝えるだけでも案外寂しさが紛れたりもする。
しかし、SNSでの思い出の共有はまた別の話だろう。画面の向こうで「いいね!」をしてくれる人たちは、あくまでも旅の当事者ではない。一緒に旅して、同じ場所で同じ瞬間を過ごした仲間たちとつくった旅の思い出こそかけがえのないものだ。
世界じゅうで自分だけの体験
翻って、一人旅ではどうか。これは勘違いしてはいけないが、「旅の思い出を誰かと共有できない」ことは、必ずしも一人旅のデメリットではないと僕は考えている。
やはり、捉え方次第だ。世界じゅうで自分だけが体験した思い出なのだと考えれば、それは途端に尊いものに変わる。誰も知らない内緒のエピソードだからこそ貴重なのだ、という発想である。
そもそも旅の動機からして、一人旅と非一人旅では案外違ったものだったりする。どちらかといえば、一人旅の方が個人的な理由が多い。趣味を追求するような旅に向いているのは一人旅だという話は前述した通りだ。
ここでは「泣かない一人旅」を提唱している。ここで言う「泣く」とはどういうことか。言葉を置き換えるなら、「感動する」と言うとわかりやすいかもしれない。
思い出の共有に価値を見出しやすい非一人旅では、この「泣く=感動する」がより重視される。ところが共有不要な一人旅になると、「泣く=感動する」必然性が下がる。
それよりも見たい、知りたい、やりたいといった具体的な目的があって、そのうえで旅に出かける。泣きたい=感動したいから旅するのではないのだ。
もちろん、行ってみたら結果的に感動することは多々あるだろう。予期せぬ展開であればあるほど感動の度合いも大きくなったりもする。
でも、最初からそれを目的とする必要はない。言ってみれば、泣ける要素は副産物である。一人旅に過度にロマンを求めずともよいのでは、と思うのだ。
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旅の心得や楽しみ方、交通手段や宿の探し方まで、全10章で一人旅に必要な全てを解説。一人旅でなくても、プロが旅立つ前にする下準備は、とても参考になります