「年を取ると時間が早い」「写真の自分の顔に違和感がある」など、私たちの暮らしの中で感じるちょっとした不思議、実は科学で解明されているものも多いそうです。そこで、世界600万人が支持したニューヨークタイムズベストセラー『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(文響社)から厳選し、誰かに伝えたくなる「科学の雑学」を連載形式でお届けします。
思いどおりに夢を見る方法
思いどおりの夢をみることができたら、どんなに楽しいだろう。意外に思えるかもしれないが、科学においては、明晰夢(夢を夢だと認識して、思いどおりにコントロールできるもの)をみることは可能であることが判明している。しかも、ほんのわずかな努力と実践で、あなたも明晰夢をみることができるのだ。
驚くべきことに、だれでもひと晩で3~7回の夢をみている。だが、すぐにその内容を忘れてしまう。
明晰夢をみるための最初のステップとして必要なのは「夢日記をつけること」である。こうすれば、夢を思い出す能力に磨きをかけ、よりはっきりとした夢をみる手助けになる。毎朝目覚めるたびに、自分が思い出せる夢の内容を簡単にでもいいので書きとめるようにしてみよう。
次にやってほしいのは「リアリティ・チェック」だ。夢の中では、現実ではたやすくできること(文章を読む、数をかぞえる、時間を確認するなど)も簡単にできない場合がほとんどだ。
試しに、時計で時間を確認し、時計から目を離したあと、再び時計を見てみてほしい。あなたがいま、夢をみていない状態ならば、時刻は同じはず。でも夢の中では、同じ動作をしても、時間が完全に変わってしまう場合がほとんどだろう。
だからこそ目が覚めているときに、リアリティ・チェックをできるだけ多くしてみる。これが自然に身につくと、夢をみている間もリアリティ・チェックができるようになる。結果的に、それが夢か現実かはっきり意識できるようになるのである。
もうひとつ、明晰夢をみるための面白いテクニックを紹介したい。「記憶誘導型明晰夢(Memory Induced Lucid Dream)」、略して「MILDテクニック」と呼ばれる方法だ。
ベッドに入って眠りに落ちる直前に、最近みた夢を思い出し、その夢の中の自分の姿を鮮やかに思い出すようにする。こうすることで、夢をみている最中に「これは夢だ!」と気づく確率を高められる。同時に、こんな言葉をくり返すとさらにいいという。「ぼく(私)は今から明晰夢をみる」。
ちなみに研究では、明晰夢をみる確率が最高になるのは真夜中に目覚め、30分ほど起きたあと、この「MILDテクニック」を実施して再び眠りについた場合だという結果が出ている。
さらに上級者向けのやりかたもある。これは、身体が眠っている状態のまま、意識だけはしっかりと保ちつづけ、明晰夢をみるための方法だ。やりかたは、身体を完全なリラックス状態にしつつも、絶対に動かないようにすること。
ただし、この方法を試していると、睡眠まひ(いわゆる金縛り)の症状が出るかもしれない。ひとつ注意しておきたいのは、金縛り状態の最中には、脳がいたずらをしかけてくるということだ。これが起こると、強い恐怖感が引き起こされ、たとえば幽霊のような幻覚をみることもある。
明晰夢にまつわる科学的な調査がおこなわれたことにより、夢を活用したドリーム・セラピーや悪夢を避ける方法の研究がいっそう進んでいる。さらに、睡眠と覚醒がひとつづきの状態なのか、まったく異なる状態なのかという研究もだ。
そしてその結果、なにかをしている夢をみるときも、実際にそうしているときも、その人の脳内のニューロン活動はほぼ変わらないことが明らかになった。脳としては夢と現実はひとつづきなのだ。意外だろう?
科学者たちも「夢にも思わなかった」結果だったはずだ。
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「感覚」「体」「心」など5つテーマで、37の疑問を科学的に解説。理系が苦手でも、クスッと笑えます