茜色の山岳寺院に息をのむ。「森の案内人」が教える、奈良極上の紅葉スポット

いよいよ木々が茜色に染まる季節がやってきます。中でもぜひ足を伸ばしたいのが、歴史深い奈良の紅葉景色。全国3000もの森を、自身の足で歩いてきた三浦豊さんが、数ある名所の中から、極上の場所を案内してくれました。今回は静かな山岳寺院と、風情あふれる日本庭園をご紹介します。

※それぞれのスポットの「紅葉の見ごろ」は、必ずお出かけの前にご確認ください

宇陀市・室生川のほとりに佇む山岳寺院

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静けさ満ちる女人高野。伽藍の檜皮葺屋根に ゆったりと重なるいろは紅葉の美しさ

大和平野の東、深い室生山の中にある室生寺。山門をくぐり、落ち葉を踏みながら鎧坂を登って伽藍を目指します。
やがて境内で育った檜の樹皮を使ったという、檜皮葺屋根の金堂が姿を現します。

そこに折り重なるのが、そばを流れる室生川の水と森の木漏れ日を味方に、ゆったりと優雅に枝を広げた茜色の紅葉。長い時間をかけて自然が作り上げた、息をのむような景色です。

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空を目指してまっすぐに伸びる欅、霊位を高めるといわれる杉、そして紅葉...。
参道に木々の色が混ざり合う。手前は山門に続く室生川にかかる橋。

室生寺とは...

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真言宗室生派の大本山寺院。女人禁制だった高野山に対し、女性の参詣が許され女人高野ともいわれる。伽藍内にある中尊釈迦如来立像などの多くの国宝も見どころ。
住所:住奈良県宇陀市室生78
電話:0745-93-2003
時間:8:30~17:00(4~11月)、9:00~16:00(12〜3月)
料金:大人600円 
交通:近鉄線室生口大野駅から、奈良交通バス・室生寺行き利用「室生寺前」下車、徒歩5分。

奈良市・自然の山水を写した日本庭園

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歩をすすめるごとに景色が移る回遊式庭園。借景の南大門や山に悠久の時を知る

この先にはどんな景色が待っているのだろう。

歩きながら、そう期待させてくれる庭。池や築山(人が作った山)の形、木の高さや剪定の程度、借景の世界遺産・東大寺南大門上に広がる空の見え方...。

目に映る全てが、どこから見ても絵になるよう考え抜かれています。

茶室の縁側から愛でる(座視鑑賞式)紅葉の枝ぶりや、池に映るその茜色さえも、作り手の繊細な美意識から生まれたものです。

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向こう岸の小さな滝は、春日山原始林から流れる水の再現。その昔東大寺にあり、焼失した七重の塔の礎石(柱を支える石)も。いまはなきものを偲しのぶ細やかさが伝わる。

依水園とは...

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前園と後園、二つの表情をもつ名勝(国指定の文化財)。前園は江戸前期、御用商人・清須美道清氏作。後園は明治時代、実業家・関藤次郎作。
住:奈県奈良市水門町74
電話:0742-25-0781
時間:9:30~16:30(入園は16:00まで)
休み:火曜(2019年10~11月は無休)、庭園整備のため12月末~1月下旬休園
料金:大人900円 
交通:近鉄奈良駅より徒歩15分

 

三浦 豊(みうら・ゆたか)先生

1977年、京 都市生まれ。日本大学芸術学部 卒業後、庭師となる。日本中の森を巡り始めたのは2004年。 樹木の素晴らしさに目覚め、現在は"森の案内人"としてその魅力を伝えるため活動中。

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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