偉人の失敗伝【漫画家・手塚治虫】人の作品の悪口を言い続けたら...

仕事や子育てもひと段落したけど、新しく何かにチャレンジすることをためらってはいませんか?そんな人に向けて、『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』(大野正人/文響社)から、誰もが知る偉人たちの大失敗エピソードをお届け。歴史に名を残す偉人の驚くべき逸話が、あなたの人生の「新しい発見」を後押ししてくれるはずです。

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悪口を言う


【人物】手塚治虫
【出身地】日本
【どんなことをした人?】マンガ家


日本人は、マンガが大好きです。日本のマンガはストーリーがふくざつなものが多く、子どもはもちろん、たくさんの大人もマンガを楽しんでいます。

マンガは世界中にあるのに、どうして日本人はこんなにマンガを愛しているのでしょう。

そのきっかけを作ったのが、手塚治虫です。「マンガの神様」ともよばれる手塚治虫。かれは、どうして神様とよばれるようになったのでしょう?

【子どものころ】大阪に生まれた治虫は、子どものころは弱気ないじめられっ子。でも、マンガをかき始めると、みんなからそんけいされるようになり、友だちもたくさんできました。
【19才】戦争という暗い時代を乗りこえ、マンガ家に。そして、今では当たり前となった、話がどんどん続いていくストーリーマンガの最初と言われる『新寶島』を発表。これが大ヒットし、人気マンガ家となります。
【25才】東京にあるトキワ荘というアパートに移り、本格的にマンガをかき始めます。ここには、手塚治虫をそんけいするわかいマンガ家たちが集まり、競い合うようにすばらしいマンガを生み出していきました。
【34才】マンガが売れ、かせいだお金でアニメを作り始めます。そして、日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』がたんじょう。マンガだけでなく、日本のアニメの歴史も、手塚治虫から始まったのです。
【60才】体を悪くして病院に入ってからも、ベッドの上でマンガをかき続けました。

まさに、マンガにささげた人生。これが「マンガの神様」手塚治虫です。でも、神様だって、失敗しています。

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多くのヒット作をもち、日本中の人からよろこばれ、そんけいされていた治虫。でも、じつは少し子どもっぽい性格で、ちょっとでも自分よりうまいマンガを見ると、ついついそのマンガをかいた人にいやみなことを言っていたそうです。

「こんな絵や話なら、ぼくにだってかけるよ」

小さい男の子が、好きな女の子の前でつい悪口を言ってしまう。これと同じような気持ちをもち続けていたのが、手塚治虫という人でした。

この性格のせいで、こんなこまったことにもなりました。あるとき、有名マンガ家の作品の悪口を、自分のマンガの中でかいてしまったことがありました。それを見て、そのマンガ家はおこり、治虫の元にどなりこんできたのです。

治虫は、相手の言っていることの正しさをみとめ、あやまりましたが、自分のまちがいに気づいたことで、自分のことがきらいになってしまいました。

さらに、そのマンガ家が、その1か月後に病気でなくなり、「悲しむよりホッとした」という気持ちになってしまったことで、自分の心のきたなさがイヤになり、ますます自分のことがきらいになってしまったのです。

しかし、このようなことがあったにもかかわらず、この後も、ちょこちょこと他のマンガ家の悪口を言っていた治虫。人をきずつけ、自分もきずつけ、それでも、何度も同じ失敗をくりかえしてしまう......。

「マンガの神様」にも、こんなどうしようもない欠点があったのです。

そんなふうに、しょっちゅう人の悪口を言っていた治虫は、当然、まわりの人からきらわれていた。と、思いますよね。

いえいえ、じつはまったくきらわれていなかったのです。

悪口を言うだけでなく、いそがしくて原稿がおくれることもしょっちゅうだった治虫は、たしかに、多くの人をこまらせてはいました。でも、治虫を知る人は、だいたい軽く笑みをうかべながら「こまった人でした」と言うそうです。決して、心からこまったような顔はしません。

それはどうしてかというと、みんな知っていたからです。治虫は「すごい」「うらやましい」と思ったときに、ついつい悪口を言ってしまう。このクセを、わかっていたのです。

また、「こんな絵や話なら、ぼくにもかける」と言うなら、自分のマンガはもっともっとおもしろいものでなければいけなくなります。そう、治虫の悪口は、ただ人を悪く言うだけでなく、自分の作品をもっと良いものにするというプレッシャーを、自分自身にあたえるものでもあったのです。

もしかしたら、治虫の悪口は、かれが死ぬまでおもしろいマンガをかき続けることができた理由のひとつなのかもしれません。

さて、だれしも生きていれば、人の悪口のひとつやふたつ、つい口に出してしまうものです。でも、「ただ悪口を言うだけの人」になってはいけません。

たとえば、「あんなのおもしろくない」と言ったのなら、「何がおもしろいのかを説明する」くらいのことはできなければいけません。「それくらいのことは自分にもできる」と言ったのなら、じっさいに自分もやってみて、できることをしめしましょう。

手塚治虫は、それができた人です。ぎゃくに、それができずに悪口やいやみを言う人は、きびしい言い方ですが、ものすごくくだらない人間です。

何もしないし、できないけど、悪口だけは言う。そんなくだらない人間にならないよう、言った言葉のせきにんくらいは取れる人になりましょう。そして、それができないなら、しっかりと心から相手にあやまるようにしましょう。

イラスト/死後くん

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034-shippai.jpgベートーヴェンからスティーブ・ジョブズまで、世界の偉人23人の失敗がポップなイラストと一緒に紹介されています

 

大野正人(おおの・まさと)

1972年、東京都生まれ。文筆家。絵本作家。『こころのふしぎなぜ?どうして?』(高橋書店)を含む「楽しく学べるシリーズ」は累計200万部を突破。著書に絵本『夢はどうしてかなわないの?』『命はどうしてたいせつなの?』(汐文社)、『一日がしあわせになる朝ごはん』(文響社)など。

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『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』

(大野正人/文響社)

手塚治虫に黒澤明、オードリー・ヘプバーンやケンタッキーのあの人まで、みんな失敗したからこそ有名になった!?歴史に名を残す23の偉人がおかした、目を覆いたくなるような大失敗図鑑。子ども向けに分かりやすい文章と面白いイラストでまとめられていますが、新たな挑戦に憶病になった大人こそ読みたい一冊です。

※この記事は『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』(大野正人/文響社)からの抜粋です。

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