教養として学んでおきたい「日本史」。でも「少しはみ出したエピソード」を知っておくと、とたんに話題が豊かになるかもしれません。そこで、オンライン予備校「スタディサプリ」の人気講師である伊藤賀一さんの著書『笑う日本史』(KADOKAWA)より、面白くてためになる、そんな日本史の話をご紹介します。
太陽の塔の右目に立て籠もり!? 謎の目玉おやじが起こしたアイジャック
1970年4月、大阪万博会場の「太陽の塔」に、異変発生。なんと、高さ70メートルほどある塔先端の黄金の顔の右目に怪しい人影が確認されたのです。人影の正体は「赤軍」と書いた赤ヘルメットに青タオルの覆面、灰色の上着に黒ズボン。「何色かハッキリせい!」と言いたくなる、なんとも統一性のない格好の男。
男は「万国博をつぶせ」とアジ演説を開始。アンタのせいで、すでにブチ壊しですよ!?
このため、塔の周囲は2000人以上の野次馬で大混雑。大阪府警は約170人の警官を出動させ整理にあたりました。捕まえるには通路が狭く、目玉の中で押し合った場合、塔が泣......いや転落の危険も。警察・万博協会も説得する方針を固め、持久戦に。
黄金の顔の両目には直径約50センチメートル、5キロワットの電球が入っており、毎晩点灯しました。しかし、点灯で男が焼け死ぬおそれがあり、その間は中止に。
そして、翌日午前10時半、太陽の塔の設計者・岡本太郎が姿を見せます。「芸術は爆発だ!爆破せよ!」とでも言うのかと興味深々の周囲をよそに「いかすね。ダンスでも踊ったらよかろうに」「自分の作品がこういう形で汚されてもかまわない」。そう語り、目玉男をカメラで撮影。「聖なるものは、常に汚されるという前提をもっているからね」と、納得し去る。
さらに正午前、次は太陽の塔の下、母の塔の階段脇に別の男が。裸で髪はボサボサ、ひげ伸び放題で奇声を上げ奇行種の巨人のように暴走。ストレスだらけの警官隊にあえなく取り押さえられる珍事件も。結局、目玉男は以後も繰り返される説得にタップアウト。鬼太郎の目玉おやじとは違い入浴もできない籠城から8日目、ようやく逮捕。
<MEMO>アイジャック
1970年の大阪万博で、太陽の塔の先端の右目部分に男が籠城。4月26日から5月3日まで8日間も塔を占拠し、威力業務妨害及び建造物侵入の現行犯で逮捕された。犯人は本籍北海道、住所不定、25歳。逮捕後に、「赤軍」とは直接関係がなかったことが判明。どこまでもお騒がせ。
イラスト/おほしんたろう
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