「いつも自分を人と比べてしまう」「自分は損ばかりしている」。そんな想いで日々モヤモヤしている方、いませんか? そんなときにぜひ知ってほしいのが、今から2500年も前の中国の思想家・老子の言葉。45年間で10万人を診察した精神科医が、その老子の言葉を「意訳」ならぬ「医訳」をしてわかりやすく解説して話題の書籍から「ジャッジフリー」な考え方を連載形式でお届けします。
私のところを訪れる患者さんのなかには、症状や状況がすでに悪くなっていて「どうしていいかわからない......」となす術(すべ)もなくうろたえている人がたくさんいます。
しかし、そういった大事になってしまう前の段階では、「このくらい自分でなんとかしなきゃ」「わざわざ人に言うような話じゃない」と勝手に決めつけていた、というケースが多いのです。
もちろん、そんな方たちにていねいに向き合い、一歩ずつ問題を解決していくのが私たちの仕事です。ただ世の中の常として、物事が大きく、難しくなっているものに対して、一発で解決するような「マジック」や「特効薬」のようなものはそもそも存在しません。
そんなときは「トイレ」のことを考えてみてください。
世の中の難しいこと、大きなことというのは、いきなり難しくなったわけでも、大きくなったわけでもありません。川の源流のように、最初は一滴の水のような、小さなことから始まっています。
毎日を懸命に生きている方にとって「もしかしたら、私、しんどいかも?」という小さなシグナルに気づくこと、それに従って休むことは難しいかもしれません。それはおそらく「がんばらなきゃ」という責任感の強さ、そして「私なんてどうなってもいい」という自己肯定感の低さからきているのだと思います。
たとえば、用を足したくてしょうがなくなってから、トイレを探すとすごく焦ってしまいますよね。でも「まだ平気かな」というころに行っておくと、ずっと平静な気分ですごせると思います。
ですから「あれ?なんか溜まってる?」と思う前に、早めに人に頼ってみてください。まだ「我慢」が必要ないころ、問題を大きくする前に手をうつのです。
■今回の老子のことば
難(かた)きを其(そ)の易きに図り、
大なるを其の細(さい)に為(な)す。
【医訳】
大問題も、まず何でもないような小さなことから起こり、だんだん大きくなる。
だからこそ、難しい仕事はそれが易(やさ)しいうちに考え、大きなことはそれが小さいうちに対処することが大切だ。
その他の「人生に、上下も勝ち負けもありません」記事リストはこちら!
老子の32の言葉を、わかりやすく優しい視点で解説。元気が出ます!