「いつも自分を人と比べてしまう」「自分は損ばかりしている」。そんな想いで日々モヤモヤしている方、いませんか? そんなときにぜひ知ってほしいのが、今から2500年も前の中国の思想家・老子の言葉。45年間で10万人を診察した精神科医が、その老子の言葉を「意訳」ならぬ「医訳」をしてわかりやすく解説して話題の書籍から「ジャッジフリー」な考え方を連載形式でお届けします。
※この記事は『人生に、上下も勝ち負けもありません 精神科医が教える老子の言葉』(野村総一郎/文響社)からの抜粋です。
思い込みをやめる「ジャッジフリー」の考え方
はじめまして。野村総一郎と申します。くわしい経歴は記事下の紹介欄にゆずるとして、私は精神科医として、45年間、延べ10万人以上の患者さんと向き合ってきました。そのなかには、
・自分は能力が低く、誰にも評価されない
・あの人はズルくて要領がいいのに、自分は不器用で損ばかりしている
・友人たちは、充実した生活を送っていて妬ましい
という思いを抱えた人たちがたくさんいました。
そういった悩みや不安の根本的な原因は、どこにあるのでしょう?
大きな理由の一つは「いつも他人と比べてしまっている」というところにあると、私は考えています。「他人と自分」という関係に悩み、過分に苦しめられているのです。
この悩みに対して、とても有効な方法が一つあります。
それは「ジャッジフリー」という思考を取り入れることです。「ジャッジフリー」ってどういうこと? と思われる方も多いでしょう。
「ジャッジ」とは「判定する」「判断を下す」という意味の言葉。さらに言うなら「何が正しいのかを決める」という意味合いを含んでいます。この「ジャッジすることを、意識的にやめる」というのが「ジャッジフリー」という思考です。
じつは、私たちはさまざまな局面で、この「ジャッジ」というものをほとんど無意識にしてしまっています。優劣をつけ、勝ち負けを意識し、上に見たり、下に見たりしているということです。
・お金がある人は幸せ。ない人は不幸。
・顔がいい人は幸せ。そうでない人は不幸。
・仕事で評価されている人は偉い。されていない人はダメ。
・友人が多い人は素敵。少ない人は寂しい。
・話が上手な人はかっこいい。口べたな人はかっこ悪い。
こんなふうに、数え上げればキリがないほど、世の中は「ジャッジ」にあふれています。
精神科のクリニックにも、こうした「ジャッジ」に苦しんでいる人がたくさん訪れます。
そんなとき私は患者さんたちに「自分で勝手に優劣をつけてしまっているだけではありませんか?」と問いかけ、「その行為をしている事実」をまず理解してもらうよう努めます。
そして「ジャッジしないことの大切さ」をていねいにお話ししていきます。
ジャッジフリーという言葉は私の造語なのですが、ストレスのない生活を「ストレスフリー」なんて言うでしょう。そのストレスを生み出している原因の一つが「ジャッジ」にあります。ですから、ストレスフリーを目指すなら、まず「ジャッジフリー」から始めてみてほしいのです。
ただ、この考え方は、私のオリジナルではありません。
じつはこれ、古代中国の思想家・老子(ろうし)のメッセージなのです。
今後の配信では、そんな「老子の言葉」を取り上げて、 「ジャッジフリー」な考え方をご紹介していきます。
とはいえ元は漢文なので、 やや解釈が難しいところもあります。 それを、医学的というわけではないのですが、 精神科医の私なりに「意訳」ならぬ「医訳」 をし、ゆるやかに解釈してお伝えします。
老子の32の言葉を、わかりやすく優しい視点で解説。元気が出ます!