井上弘美先生に学ぶ、旬の俳句。2月は「決め手となる言葉」というテーマでご紹介します。
白鳥の北帰(ほっき)うながす斑雪山(はだれやま) 野澤節子
白鳥や鴨など冬の間私たちを楽しませてくれた水鳥も、早春には北へ帰って行きます。「白鳥」は冬の季語。しかし「斑雪山」は春の季語で、雪が解け始めた山の事を言います。この白鳥や鴨など冬の間私たちを楽しませてくれた水鳥も、早春には北へ帰って行きます。
「白鳥」は冬の季語。しかし「斑雪山」は春の季語で、雪が解け始めた山の事を言います。このやがて始まる白鳥たちの北帰行が見えるようです。
作者は一九二〇年、横浜生まれ。読売文学賞などを受賞し、俳句史に名を留めました。一九九五年に逝去、享年七十五。
梅咲いて湖(うみ)を香(かお)らす若狭かな 遠藤若狭男
若狭の国は現在の福井県の西部で、この句の作者の故郷です。作品の中に自分の俳号でもある「若狭」を留めた、故郷讃歌といえます。
「梅」は寒気の中に凜々しく咲いて、馥郁(ふくいく)たる香りを放ちます。この句の「湖」がどこなのかは不明ですが、「梅」が「湖」を「香らす」という大胆な発想でスケールが大きく、一句全体が香気を漂わしているような美しさがあります。また、「若狭」の固有名詞が古風なイメージをもたらして、品格があります。
作者は一九四七年、福井県生まれ。俳誌『若狭』を創刊・主宰。二〇一八年十二月に逝去。