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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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DNAに制御される細胞死「アポトーシス」
細胞は〝自殺〟する
動植物は「種や卵子が細胞分裂を繰り返して大人の形に成長する」ということがよく知られています。しかし、単純に細胞分裂を繰り返したのでは形をつくれません。生物はどうやって本来の形になるのでしょうか。
たとえば胎児の指の形ができるとき、まず杓文字(しゃもじ)のような形ができます。そしてほどなく、指の間の細胞が消え、指の形ができます。指と指の間の細胞が〝自殺〟するのです。
オタマジャクシはカエルになるとき、尻尾が消えます。秋になると、ひとりでに木の葉が落ちます。こうした現象にも細胞の自殺が関与しています。以上の例からもわかるように、多細胞の生物には、細胞が自殺することで全体がよい状態を保てるシステムが備わっているのです。このような細胞死をアポトーシスといいます。
アポトーシスは細胞の核の中のDNAが縮まることから始まります。そのDNAは断片化され、さらに細胞膜(まく)が変形して、最後にマクロファージと呼ばれる清掃係に食べられます。こうして、プログラムされたように秩序立って細胞は死んでいくのです。
アポトーシスはDNAに制御されていることはわかっていますが、どのようにプログラミングされているのかの詳細は不明です。