重要文化財「如意輪観音坐像」
平安時代、醍醐寺蔵、画像提供:奈良国立博物館、撮影:森村欣司
2018年9月19日〜11月11日までサントリー美術館、そして2019年1月29日〜3月24日まで九州国立博物館の2会場にて「京都・醍醐寺―真言密教の宇宙―」が開催されます。今回の展覧会は、醍醐寺に収蔵された密教美術の至宝を紹介するもので、数々の国宝・重要文化財が集結します。
2016年、醍醐寺の仏像や仏画をはじめ、文書・書跡などたくさんの貴重な寺宝が海を渡り、初めて中国で展示されました。醍醐寺の歴史と美術をたどる展覧会は好評を博し、八十万人以上が来場しました。今回はこの中国での開催を記念して、東京と福岡の2会場で展覧会が開催されます。密教美術のみならず、醍醐寺をめぐる華やかな近世美術も鑑賞できる機会となります。
国宝「薬師如来坐像」
平安時代、醍醐寺蔵、画像提供:奈良国立博物館、撮影:佐々木香輔
今回の展覧会では、重要文化財である「如意輪観音坐像」や、国宝である「薬師如来坐像」も披露されます。加持祈祷や儀式などを重視した醍醐寺は、それまでの日本仏教にはない新鮮な教えが、多くの天皇や貴族たちの心をとらえました。寺内にはその縁の品々のほか、たくさんの僧が集まる寺の本尊として、彫刻や絵画、儀式に用いる仏具、儀式の手順や記録などを記した文書や聖教などが蓄積されていきました。それらの寺宝の数々を、心ゆくまでご鑑賞いただけます。
修法や祈祷に重きが置かれた密教は、仏像や仏画に描かれる尊像の研究も盛んに行われました。とくにさまざまな宗派、流派が集まった醍醐寺は、その成果が多数、残されています。尊像の設計図とも言える、料紙に墨線で描かれた「白描図像」もその1つです。今回の展覧会では、尊像が描かれた作品とともに、白描図像もセットで展示されます。
醍醐寺の歴史は、天皇に貴族、武士など、その時代の権力者たちとともにありました。歴代座主はそういった人々と深い関わりを持ちながら、空海によってもたらされた密教の教えを広めてきました。天下人・豊臣秀吉がその権勢を示すために開いた、「醍醐の花見」の開催地でもある醍醐寺。その関連作品や数々の歴史ある襖絵、絵画などを鑑賞しながら、近世の醍醐寺に至る変遷をたどれます。多くの密教美術や修法の歴史を持つ醍醐寺の魅力に、展示作品から迫ってみると、新たな醍醐の宇宙が見つかるかもしれません。