人生100年時代、仕事の引退は80代、と言われるようになっている現代において、私たちに求められているのは「どれほど個人の市場価値を上げられるか」ということ。ではどうすれば個人の市場価値は上げられるのでしょうか?その答えは「独学」にありました。
本書『「超」独学法 AI時代の新しい働き方へ』は、今日から始められる「独学」の勉強法を集めた最強の独学メソッド本。独学への不安を払しょくし、新たな可能性を見出す手がかりがここに!
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大げさに考えず、とにかく第一歩を踏み出そう
何かに興味を抱き、それを学ぼうとすることが、独学の第一歩である。それは10年前、20年前と比べて、ずいぶん簡単にできるようになった。だから、それを積極的に活用しよう。独学は、資格を取るためのものだけではない。あるいは、外国語に習熟することだけではない。もっと簡単なことから始められるものだ。
独学の対象は、目の前にいくらでも転がっている。少なくとも出発点においては、系統立った勉強でなくともよい。断片的なことの独学であっても一向に構わない。これが、重要なことの手がかりになる場合が多い。「いつかやろう」と考えて、いつになっても始めないのが一番よくないのだ。
スタートしてから準備する
「学校選び」から始めるのでは、間違った選択をした場合のやり直しのコストが高い。しかし、前に述べた3つの提案を始めるだけなら、間違った方向であっても、やり直しのためのコストはかからないだろう。この方法によって勉強すべき方向が分かったら、その方向に進めばよい。途中で行き詰まるかもしれないが、そのときには考え直せばよい。要するに、歩きながら考えて、必要なら方向を修正すればよいのだ。何もしないのではなく、また、テレビを見て漫然と過ごすのでもなく、とにかく勉強を始めるべきだ。第一歩を踏み出すことが重要だ。
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こうしたことをしばらく続けていれば、それが楽しいことだと分かってくるだろう。そして、それが何らかのよい結果をもたらしてくれることにも気がつくだろう。調べるのも、バラバラに調べるのではなく、系統立って調べるようになるだろう。スマートフォンの操作に習熟してきたら、自分でブログやホームページを開設する。あるいはSNSで発信するということをやってみる。
この段階になったら、目的意識を明確にし、準備をしていただきたい。そして、学校とどちらがよいかを比較検討する。その上で、将来の仕事にどのように活用できるかを考えてみよう。なお、独学で習得できることとしては、これら以外にも、文章の書き方、プレゼンテーションの方法、説得の仕方、集中すべき対象の見つけ方、発想の方法などもある。これらについては、別の機会に述べることとしたい。
敵・味方理論
独学する習慣を持っている人と持っていない人の間では、時間が経てば大きな差が生じてしまう。これに関して、私は、「敵・味方理論」というものを信じている。あるものが敵であると考えると、自分からますます遠ざかってしまって、本当に敵になってしまう。その反対に、味方であると考えると、自然に自分に近づいてくる。
分からないことは、自分の敵である。それを調べないで放置しておけば、敵のままだ。そして、時間が経つにつれてますます遠ざけてしまう。これを調べてみれば、意外と簡単なことであったり、あるいは自分の役に立つ場合もある。つまり味方であることが分かる場合もある。そうなれば、もっと調べてその専門家になれるだろう。インターネットが登場したときもそうだった。これを敵だと考えると、それを遠ざけて利用しない。ところが、他の人はインターネットを使ってさまざまなことをやっている。このため、ますますインターネットは敵になってしまう。
しかし、インターネットの使い方を十分に会得していなくとも、自分の味方であると考えると、いろいろな機会にそれを利用し、利用の仕方が次第にうまくなっていく。こうして、インターネットが実際に自分の味方になる。外国語についても同じだ。味方になると考え、映画のDVDを見るときも英語を聴き取ろうとしていると、次第に聴き取れるようになる。敵か味方かというのは、多くの場合に主観的な判断なのである。または、食わず嫌いによる単なる思い込みなのである。あるいは、単なる好き嫌いであると言ってもよい。
そして敵と考えるか味方と考えるかによって、その後の状況が大きく変わるのだ。自動的に敵が味方に変わることはない。こちら側で何らかのアクションをとらなければならない。そのアクションが、独学なのである。独学によってしか、敵を味方に変えることはできない。
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野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。
『「超」独学法』
(野口悠紀雄/角川新書)
AI技術により新しい働き方をする人が増えている現代は、個人に対する「市場価値」が求められる社会へと変化してきています。
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